退職の進め方
看護師の試用期間とは。退職と本採用拒否の基本を整理する
更新 2026年10月23日読むのに約6分
試用期間は、お試しの期間に見えますが、試用期間中も、労働契約はすでに成立していると整理されています。言葉の意味、14日と予告の決まり、本採用拒否と退職の場面を整理します。
新しい職場の最初の数週間は、帰ると、どっと眠くなるよね。
試用期間のしくみを、順番に見ていこうか。
「試用期間」は、何を指している言葉か
試用期間は、入職してから一定の期間、その人が職場に合うかどうかを見るために置かれる期間です。看護師の入職でも、「最初の○か月は試用期間」などの形で、条件の書面や就業規則に書かれていることがあります。
期間の長さについて、労働基準法に定めはありません。厚生労働省のモデル就業規則は、あまりに長い期間は労働者の地位を不安定にするので好ましくない、と解説しています。
募集の段階でも、試用期間は大事な項目です。厚生労働省は、書面で明示すべき労働条件のひとつに、「試みの使用期間に関する事項」を挙げています。入職前に、試用期間があるのか、何か月か、本採用後と条件が違うのかを、条件の書面で見ます。
試用期間中の待遇も、よく聞かれる点です。日本年金機構は、試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められる、と案内しています。加入の条件を満たす働き方なら、健康保険と厚生年金は入職日から加入するのが基本です。年次有給休暇は、雇入れの日から6か月継続勤務し、8割以上出勤すると10日が付きます。この継続勤務は在籍している期間を指すため、試用期間も数えに入ります。給与明細で保険料が引かれているか、有給の起算日がいつかを、最初の月に確かめます。
使われる言葉は、似ていても別のものです。次のように整理します。
- 試用期間(試みの使用期間):本採用の前に、適性を見る期間として置かれるもの
- 本採用:試用期間が終わって、通常の雇用として続くこと
- 本採用拒否:試用期間の終わりに、本採用しないと告げられること。法的には解雇として扱われる、というのが、中央労働委員会(厚生労働省)のあっせん事例集の整理
- 試用期間の延長:期間をさらに伸ばすこと。延長できるかどうかは、条件の書面と就業規則の定めを、勤め先で確認する
試用期間中も、労働契約は成立している
中央労働委員会のあっせん事例集は、通常の試用期間中の契約関係は、解約権を留保した労働契約がすでに成立していると解されている、と整理しています。言い換えると、試用期間は、雇用のない「お試し」ではなく、雇用の中の一段階です。
解約権が留保されていても、無制限ではありません。同じ事例集の整理では、通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められるものの、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と是認されるものでなくてはなりません。採用の当初は知ることができなかった事実が試用期間中に分かり、引き続き雇用しておくのが適当でないと判断することに客観的な合理性があれば、相当とされる、という整理です。
同じ事例集には、個別の裁判例も載っています。周囲との悶着が絶えないことなどを理由とした解約が有効とされた例と、声を出して挨拶しなかったことを理由とした解約が無効とされた例です。どこまでが相当かは、事情ごとに判断される、ということです。
労働契約法16条も、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして無効、と定めています。試用期間中でも、本採用を断る理由が客観的に合理的か、社会通念上相当か、が問われます。
14日の線と、30日の予告
解雇には、原則として、少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)が必要です(労働基準法20条)。予告の日数は、平均賃金を支払った日数分だけ、短縮できます。
ただし、同法21条は、「試の使用期間中の者」には、20条を適用しない、と定めています。これには条件があり、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、この例外から外れます。モデル就業規則の解説も、最初の14日以内なら即時に解雇できるが、14日を超えて雇用したあとに解雇するときは、原則として30日以上前の予告か、平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要、と説明しています。
つまり、入職から14日を超えたあとに「本採用しない」と告げられた場合は、予告か手当の話になります。ここまでを、短くまとめます。
- 入職から14日以内:解雇予告の決まり(20条)は、適用されません(21条)。ただし、解雇が有効かどうかは、理由によって別に判断されます
- 入職から14日を超えた:原則として、30日以上前の予告か、30日分以上の平均賃金。手当を払った日数分、予告は短縮できます
- 解雇の理由:予告を受けた日から退職の日までの間に、理由を記した証明書を請求できます(22条2項)
- 理由に納得できない:総合労働相談コーナーで相談できます
「本採用しない」と言われたら、頭が真っ白になるかもしれないね。
聞ける窓口が、ちゃんとあるからね。急いで答えを出さなくていいよ。
「本採用しない」と言われたとき、自分から辞めたいとき
試用期間の場面は、2つに分かれます。会社から本採用しないと告げられたときと、自分から辞めたいと思うときです。
会社から告げられたときは、まず、それが解雇の予告なのか、自分から辞めてほしいという退職勧奨なのかを、言葉で確かめます。退職勧奨は、応じるか拒否するかを自由に選べ、その場で承諾する必要はないと、厚生労働省が説明しています。解雇の予告であれば、予告を受けた日から退職の日までの間に、解雇の理由を記した証明書を請求できます(労働基準法22条2項)。
本採用をしないというお話は、解雇の予告ということでしょうか。そうであれば、理由を記した証明書を請求したいので、手続きを教えてください。
解雇かどうかを確かめるときの例
- 言葉で確かめる解雇か、勧奨か
- その場で承諾しない勧奨のとき
- 日付と言葉を残す事実だけ
- 証明書を請求予告を受けたあと
- 窓口に相談平日の日中・無料
言われたことは、忘れないうちに、一行だけ書いておこうか。
自分から辞めたいときは、試用期間中でも労働契約は成立している、という前提で考えます。期間の定めのない雇用なら、退職の申入れの基本は、民法627条1項の、申入れから2週間です。試用期間中の退職の手続きに定めがあるかは、就業規則と条件の書面で確認します。契約期間のある雇用(契約職員など)は、期間の途中で辞めるのに、やむを得ない事由が要る場面があります。2週間と即日の関係は、即日退職の一般的な考え方に整理しました。
入職前に聞いていた条件が、実際と違っていた場合は、労働基準法15条2項により、労働者が即時に契約を解除できます。住居を変えて就職した人が、契約解除の日から14日以内に帰郷するときは、使用者が必要な旅費を負担する定めもあります(同条3項)。ただし、「つらいから」という理由では使えず、示された条件が事実と違っていた場合に限ります。引き止められたときの考え方は、退職の引き止めを断る考え方に書きました。
試用期間のうちに、自分の側で確かめておくこと
試用期間は、職場が見るだけでなく、自分が見る期間でもあります。合わないと感じた点を、早めに言葉にしておくと、続けるか、辞めるかを決めやすくなります。次の流れを、1週間ごとに回してみます。
- 働く指導を受ける
- 書き留める日付と言われたこと
- 面談で聞く評価と課題
- 書面と照らす条件・就業規則
週の終わりに読み返すと、気づいたことが整理しやすいよ。
窓口は、都道府県労働局や労働基準監督署内の総合労働相談コーナー(平日の日中、無料・予約不要)が使えます。夜間や休日は、労働条件相談「ほっとライン」(0120-811-610、平日17〜22時・土日祝9〜21時)があります。受付時間は変わることがあるため、公式ページで確かめます。つらさが強いときは、続けるかどうかの判断を急がず、つらいときの窓口にも話せます。
試用期間は、ひとりで耐える期間じゃないよ。聞けることは、聞いていいんだよ。
よくある質問
試用期間中なら、いつでも辞めさせられますか?
いつでも、とは言えません。入職から14日以内は、解雇予告の決まりが適用されませんが、14日を超えると予告か手当が要ります。どちらの場合も、解雇が有効かどうかは、理由が客観的に合理的か、社会通念上相当かで別に判断されます。
試用期間中に自分から辞めたいときは、何日前に伝えればよいですか?
期間の定めのない雇用では、民法627条1項により、申入れから2週間で雇用が終了します。試用期間中の手続きは、就業規則と条件の書面に定めがないかを確認し、揉めたくなければ、就業規則の期限に合わせて早めに伝えます。
本採用を断られたとき、理由を書面でもらえますか?
解雇の予告を受けた場合は、予告を受けた日から退職の日までの間に、理由を記した証明書を請求できます(労働基準法22条2項)。自分から辞めてほしいという勧奨の場合は、応じるかどうかを自由に選べます。
試用期間中も、社会保険に入り、有給休暇の日数は数えられますか?
日本年金機構は、試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められるとしています。有給休暇の6か月は雇入れの日から数え、在籍期間を指すので、試用期間も含まれます。
出典・参考(公的な情報)
- 民法 第627条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第15条・第20条・第21条・第22条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働契約法 第16条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 個別あっせん事例 [9] 試用期間中の解雇(中央労働委員会(厚生労働省))
- モデル就業規則(令和7年12月版)(厚生労働省)
- 労働条件の明示(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
- 退職、解雇、雇止めなど(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
- 適用事業所と被保険者(試用期間中の扱い)(日本年金機構)
- 年次有給休暇(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 労働条件相談「ほっとライン」(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。