心とからだのケア
看護師のPTSDとパニック。つらい体験のあとの不調と、受診を考える目安
更新 2026年10月23日読むのに約6分
仕事でつらい場面があったあと、ふとした瞬間に思い出して眠れなくなることがあります。この記事では、公的なページが書いている様子見の期間と相談の目安、使える窓口を、よくある誤解を一つずつ解く形で整理します。
思い出したくないのに、ふっと浮かんでくる。そういう夜が続くと、しんどいよね。
いま眠れていないなら、先に話せる窓口のことだけ、伝えさせてね。
先に、夜でも話せる窓口を並べておきます
ここに書くのは、診断ではなく、つらい体験のあとに続く不調について、公的なページが書いている範囲の整理です。読むのがしんどいときは、この節の窓口だけを見て、閉じてしまって大丈夫です。
- #いのちSOS:0120-061-338(フリーダイヤル・無料。24時間365日)
- よりそいホットライン:0120-279-338(フリーダイヤル・無料。24時間。050で始まるIP電話からは 050-3655-0279)
夜中でも、この2つはつながります。働く人向けの「こころの耳」の電話・SNS相談(平日の夜と土日。祝日・振替休日・年末年始は休み)など、時間の決まった窓口の番号と受付時間は、メンタル相談窓口の一覧にまとめています。
誤解1・2 対象は限られた人か、気持ちの弱さか
こころの情報サイト(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)のPTSDのページは、死の危険に直面した体験のあとに、その記憶が自分の意志とは関係なく、フラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まる、現実感がなくなる、といった状態が起こりうると説明しています。命に関わる体験をした人に起こりうるもので、決して珍しくない、とも書かれています。
ページが挙げている症状は、次の4つの形です。
- 突然、つらい記憶がよみがえる
- 常に神経が張りつめている(イライラする、過敏になる、眠れない)
- 記憶を呼び起こす状況を避ける
- 感覚が麻痺したようになる
| 時期・場面 | 公的ページの書き方 | この記事での動き |
|---|---|---|
| 直後〜1か月程度 | 多くの人に症状が出る。様子を見て自然な回復を待つ | 休む・眠る・予定を減らす |
| 数か月たっても | 同じ症状が続く、悪化傾向があれば、専門家への相談を検討 | 受診先・相談先を決める |
| 眠れない日が続く | 睡眠ガイド:日中の生活に影響があれば、速やかに医師に相談 | かかりつけ医・医療機関へ |
| 犯罪の被害にあった | 警察の相談窓口、犯罪被害者支援センターなども案内 | 該当するときだけ |
出典:こころの情報サイト(PTSD)、健康づくりのための睡眠ガイド2023。診断ではなく目安の整理です。
時期ごとに、できることを分けて見よう。
ここで気をつけたいのは、看護の現場で起きる出来事(急変、看取り、暴言や暴力など)が当てはまるかどうかは、このページに書かれていないことです。この記事も、読んだ人の体験が当てはまるかを判断しません。判断は、診察を受けた医師の仕事です。
もう一つの誤解は、「思い出してしまうのは、気持ちが弱いからだ」という考えです。ページは、記憶が自分の意志とは関係なく思い出される状態として説明していて、気持ちの強さや弱さの話としては書いていません。
眠れた夜と眠れなかった夜に、小さく印をつけておこうか。
誤解3・4 「すぐ病気」でも「時間が解決する」でもない
同じページは、つらい体験の直後は多くの人に症状が出ると説明し、事件や事故から1か月程度は、様子を見て自然な回復を待つとしています。そのうえで、数か月たっても同じような症状が続いたり、悪化する傾向がみられたりしたら、専門家への相談を検討する、という書き方です。
「様子を見る」は、ひとりで耐えるという意味ではありません。眠れない日が続くときの目安は、別の資料にあります。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、十分な時間眠れない、休養感が得られない、日中の眠気が強いといった症状が続き、日中の生活に影響しているときは、速やかに医師に相談するよう書いています。交替制勤務についても、不眠や休養感の低下、業務中の眠気が続いて日常生活に支障があるときは、速やかに医療機関を受診する、と書かれています。
様子を見る時期(目安:1か月程度)
直後は多くの人に症状が出る時期とされています。休む、眠る、予定を減らすなど、回復の邪魔をしないことが中心です。眠れない日が続くなど支障が強いときは、この時期でも相談できます。
相談を考える時期(目安:数か月続く・悪化する)
同じような症状が数か月たっても続く、または悪化する傾向があるときです。精神科・心療内科、地域の精神保健福祉センターなどが、相談先として挙げられています。
誤解5 診断名がつかないと、相談してはいけない
PTSDのページは、相談先として、精神科や心療内科のほか、地域の精神保健福祉センターを案内しています。犯罪の被害にあった場合は、警察の相談窓口や犯罪被害者支援センターも挙げられています。診断名がついていることは、相談の条件として書かれていません。「眠れない」「思い出してしまう」という困りごとのままで、話してよい場所です。
e-ヘルスネットによると、精神保健福祉センターは、都道府県や政令指定都市に置かれ、精神保健福祉の相談を業務の一つにしている機関です。保健所も、地域の精神保健福祉の中心的な行政機関で、相談を業務としています。電話番号や受付時間は地域ごとに違うため、お住まいの地域の窓口を調べて、確かめてください。受診の手順や費用も医療機関ごとに違うので、予約の電話で聞いてみると進めやすくなります。
パニック発作が出たときの受診の順番と、仕事・お休みのこと
こころの情報サイトの「不安症」のページは、パニック症を、動悸などの体の症状を伴う急激な強い不安(パニック発作)が、突然くり返し起こるものと説明しています。発作には、状況から予想できるものと、予想できないものがあり、「また起きるのでは」という不安から行動が制限され、生活に大きな支障が出るとされています。つらい体験を思い出す場面で発作が出る人も、まったく関係のない場面で出る人もいます。
受診の順番について、同じページは、動悸や呼吸困難があるときは、まず内科の診察を受けるよう勧めています。甲状腺の病気、不整脈、貧血などが原因で不安が生じることもあるためです。体の原因が見つからないときに、精神科・心療内科などの専門家に相談する流れになります。治療としては、認知行動療法(多くは保険適用)と、SSRIなどの薬が挙げられ、抗不安薬はすぐ効く一方で依存を生じることがあるため、指導を受けながら使う必要があるとされています。
勤務中に発作が出たときに備えて、メモに「いつ・どこで・何をしていたか・何分くらいで治まったか」を書いておくと、内科でも専門の医師にも伝えやすくなります。受け持ちの途中で動けなくなりそうなときに声をかける相手を、勤務の始めに1人決めておく方法もあります。
仕事で起きた出来事がきっかけだったと考える場合に、知っておきたい制度があります。厚生労働省の認定基準(2023年9月、基発0901第2号)は、精神障害を労災として扱う要件を、次の3つとしています。発病していること、発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷があること、業務以外の負荷や本人側の要因で発病したとは認められないこと、です。強い負荷かどうかは、本人の受け止めではなく、同種の労働者が一般にどう受け止めるかで評価するとされています。
対象になる精神障害の範囲や、個別の出来事が当たるかどうかは、労働基準監督署が個別に判断します。ここでは、こういう基準がある、という紹介にとどめます。労災と、業務外の病気やけがで休むときの傷病手当金は、別の仕組みです。どちらになるかを自分で決めてしまわず、休む場合の流れは休職についての記事で確かめ、迷うときは窓口で聞いてください。
今夜は、横になるだけでもいいからね。続きは、明るいところで。
看取りが重なってしんどいときの気持ちは看取りのあとのつらさ、感情を抑えて働き続ける疲れは感情労働による疲れで別に扱っています。つらいのは自分が弱いからだ、と思えてきたときは「メンタルが弱いのかも」と思ったときの整理も読めます。
窓口の番号を一つ覚えられたら、今日はそれで十分だよ。
今日はこのくらいにして、からだを休めようね。
よくある質問
つらい場面のあと、1か月たたないと相談できませんか?
そうではありません。公的なページは、1か月程度は様子を見て自然な回復を待つとしていますが、眠れない状態が続いて日中の生活に影響しているときの目安は、睡眠ガイドにあります。つらさが強い夜は、24時間の窓口もあります。
看護の仕事で見た場面でも、PTSDになりますか?
公的なページの説明は、被害にあった人など一般の人を想定して書かれていて、看護の場面が当てはまるかは書かれていません。当てはまるかどうかは、診察を受けた医師が判断します。症状で困っているなら、診断名がつく前でも相談できます。
看護師が仕事中に動悸や息苦しさが急に出るのは、パニック障害ですか?
自分では決められません。こころの情報サイトは、動悸や呼吸困難があるときは、甲状腺の病気や不整脈などの可能性もあるため、まず内科の診察を受けるよう勧めています。体の原因がないときに、精神科・心療内科などに相談します。
出典・参考(公的な情報)
- PTSD(こころの情報サイト)(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
- 不安症(こころの情報サイト)(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
- 電話相談窓口(困った時の相談方法・窓口|まもろうよ こころ)(厚生労働省)
- 働く人の「こころの耳電話相談」(こころの耳(厚生労働省))
- 働く人の「こころの耳SNS相談」(こころの耳(厚生労働省))
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)
- 精神保健福祉センターと保健所(e-ヘルスネット)(厚生労働省)
- 心理的負荷による精神障害の認定基準について(基発0901第2号)(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。