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労災の手続き

看護師の労災の対象と申請の流れ。針刺し・腰痛・通勤中のけがは

更新 2026年10月23日読むのに約7分

けがや痛みが仕事に関係しているとき、労災になるのか、どう申請するのかが分からず、言い出せないことがあります。この記事では、厚生労働省の資料にある対象の考え方と、請求の流れを整理します。

仕事でけがをしたり、体を痛めたりしても、言い出しにくいときがあるよね。

労災の対象は、仕事のけがと通勤のけが

厚生労働省のリーフレットは、労災保険の給付を、仕事によるものと通勤によるものに分けて示しています。仕事によるものは「業務災害」と「複数業務要因災害」、通勤によるものは「通勤災害」です(労働者災害補償保険法7条)。労働者が使用される事業は、法人・個人を問わず適用事業とされています。パートや有期の雇用など、雇用形態ごとの扱いは、勤め先と労働基準監督署で確かめてください。

業務災害とは、業務を原因とする負傷・疾病・障害・死亡をいいます。業務と傷病との間に一定の因果関係があることを「業務上」と呼びます。所定労働時間内や残業時間内に、事業場の施設内で業務に就いている間は、特段の事情がなければ、業務災害と認められます。私的な行為や業務を逸脱した行為が原因の場合、故意に起こした場合、個人的な恨みによる第三者の暴行は、認められません。休憩時間や就業の前後も、私的な行為による災害は対象外ですが、施設や設備、管理の状況が原因なら業務災害になります。トイレなどの生理的行為は、就業中の災害と同じに扱われます。

病気は、3つの要件で見ます。仕事の場に有害な因子(病原体を含む)があること、健康障害を起こしうる程度にさらされたこと、発症の経過と病態が医学的にみて妥当であることです。同時に複数の事業場で働く人の、脳・心臓疾患や精神障害などは、複数の事業場の負荷を合わせて評価する「複数業務要因災害」の考え方もあります。

通勤災害の「通勤」は、住居と就業の場所の間の往復を、合理的な経路と方法で行うことです。途中で寄り道をすると、その間とその後の移動は通勤から外れます。ただし、日用品の購入、教育訓練、病院での診察や治療、要介護状態の家族の継続的な介護など、省令で定める日常生活上必要な行為を、やむを得ない事由で最小限度で行う場合は、その間を除いて、後の移動は通勤に戻ります。経路近くの公衆トイレの使用や、経路上の店での飲み物の購入は、逸脱・中断になりません。映画館に入る、飲酒するなどは、逸脱・中断になります。

事業主が用意した専用の交通機関での出退勤や、緊急の用務で休日に呼び出されての出勤は、通勤災害ではなく業務災害になります。夜勤明けの帰り道の買い物や通院が、省令で定める範囲に当たるかどうかは、個別に見られます。迷うときは、寄った場所と時刻を覚えておき、労働基準監督署に聞いてください。

起きた日の時刻と場所は、メモに残しておこうね。あとで思い出す手がかりになるよ。

針刺し・腰痛・心の不調は、制度ではこう整理されている

針刺しや切創のあとは、まず職場のマニュアルに沿って報告し、感染症に対応できる医療機関で受診することが先です。労災の書類は、そのあとで整えます。厚生労働省の通知(平成22年)では、HIVに汚染された血液への曝露後の抗HIV薬の投与が、針刺し事故などの受傷後からの一連の処置として、労災保険の給付の対象と示されました。HIV感染の有無が確認されるまでの間の投与を療養の範囲に含め、受傷後4週間までの投与を認めています。肝炎の検査などの扱いは、勤め先の担当部署や労働基準監督署で確かめてください。公立病院の職員は、労災保険でなく別の制度(公務災害)の対象になることがあります。

腰痛は、厚生労働省の認定基準で、突発的な出来事による腰痛と、重量物を扱うなど腰に過度の負担がかかる仕事を続けたことによる腰痛の、2つに分けられています。いわゆるぎっくり腰は、日常的な動作の中で生じるため、仕事中に発症してもただちに対象とはならず、発症時の動作や姿勢の異常性から、腰に強い力が作用した場合に、認められることがあります。対象は、医師が療養の必要があると認めたものです。看護・介護の作業が、どの類型に当たるかは、リーフレットに具体例がありません。予防の指針と続け方は、看護師の腰痛の記事にまとめています。

心の不調は、精神障害の認定基準(令和5年9月の通達)で、①対象の精神障害を発病していること、②発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷があったこと、③業務以外の心理的負荷や本人の要因で発病したと認められないこと、の3つをすべて満たすものを、業務上の疾病として扱います。強い心理的負荷かどうかは、本人の受け止めではなく、同じ立場の労働者が一般にどう受け止めるかで見ます。令和5年の改正で、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」が評価表の項目に加わりました。個別の判断は、労働基準監督署が行います。つらさが続くときは、労災の手続きと並べて、つらいときの窓口も使えます。

給付の種類と、休業の待期3日

業務災害の給付は、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金、介護補償給付の7種類です。通勤災害は、名前に「補償」が付かず、療養給付、休業給付などと呼ばれ、療養給付を受けるときは、初回の休業給付から一部負担金200円が引かれます(厚生労働省のパンフレット、令和8年時点)。治療は、労災病院や労災保険指定医療機関では「療養の給付」として、無料で治療や薬剤の支給を受けられます。指定外の医療機関では、いったん自分で支払い、あとで「療養の費用」を請求します。請求書の様式が違うため、受診の前に、指定かどうかを聞いておくと手続きが分かりやすくなります。

休業補償給付は、業務上の負傷や疾病で療養のために働けず、賃金を受けない日の、第4日目から支給されます。額は、1日につき給付基礎日額の60%です(労働者災害補償保険法14条)。これに、休業特別支給金(給付基礎日額の20%)が加わります。給付基礎日額は、原則として労働基準法の平均賃金にあたり、事故の起きた日などの直前3か月に支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時の賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日あたりの額です。人によって額が違うため、月にいくら受け取れるかは、この記事では書けません。

休業の初日から3日目までは待期期間と呼ばれます。「最初の3日は何も出ない」のではなく、業務災害の場合は、使用者が労働基準法76条により、平均賃金の60%の休業補償をします。通勤災害の待期3日については、事業主の補償責任の法令上の規定がないと、厚生労働省が説明しています。

休業が続くときの、請求のくり返し
  1. 請求書を書く休業した期間と診断
  2. 監督署へ出す事業主の証明を付けて
  3. 調査と決定支給か不支給かを判断
  4. 給付を受ける休業4日目から

1回で終わらないときは、区切って出していくよ。

療養が1年6か月を過ぎても傷病が治らず、障害の程度が傷病等級に当たるときは、傷病補償年金の対象になる場合があります。症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても効果が期待できなくなった状態を「治ゆ(症状固定)」と呼び、療養の給付は、そこで終わります。痛みが残っていても、医療の効果が期待できないと判断された場合は同じです。

請求書の出し方と、期限、会社が協力しないとき

けがや発症から、請求までの流れ
  1. 必要な受診をする指定の医療機関かを聞く
  2. 職場に報告する上司や担当部署へ
  3. 請求書を書く日時・場所・作業
  4. 事業主の証明をもらう得られなくても請求可
  5. 監督署へ出す療養の給付は医療機関経由

順番に進めれば、いいんだよ。

給付を受けるには、被災した本人(または遺族)が請求書を書き、被災した事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に出します。療養の給付は、受診している医療機関を経由して出します。請求書には、事業主の証明と、必要に応じて医師の診断書などが付きます。請求書は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。支給か不支給かは、労働基準監督署が調査して決めます。

災害の状況の欄には、事故や発病の日時(午前・午後まで)、どこで、どんな作業中に、どんな物や環境に、どんな不安全・有害な状態があって、どんな災害が起きたかを、分かるように書きます。災害の発生を確認した人の職名と氏名も書きます。起きた日の勤務、場所、作業、気づいた時刻をメモに残しておくと、書くときの材料になります。

会社が事業主の証明を拒否する、会社がなくなっているなど、証明が得られない場合でも、労災の請求はできます。厚生労働省は、最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署に相談するよう案内しています。請求できることと、認定されることは別で、認定は調査のうえで決まります。請求書の書き方や支給要件などの一般的な質問には、労災保険相談ダイヤル(0570-006031、月〜金の8:30〜17:15。祝日・年末年始を除く。通話料がかかります)があります。個別の事案は、管轄の労働基準監督署に相談します。番号や時間は変わることがあるため、厚生労働省のページで確かめてからかけてください。

時効は、給付で違います。療養の費用・休業・葬祭料・介護は2年、障害・遺族は5年です(労働者災害補償保険法42条)。起算点は、休業は賃金を受けない日の翌日、療養の費用は費用の支出が確定した日の翌日、障害は傷病が治ゆした日の翌日です。療養の費用については、期限内に請求書を出せば時効の問題はなくなると、厚生労働省のパンフレットは書いています。なお、2026年7月に公布された改正法(令和8年法律第60号)で、業務上かどうかの判断に時間がかかる病気として政令で定めるもの(厚生労働省の概要では、脳・心臓疾患や精神疾患などを想定)は、療養や休業の時効が2年から5年に延びます。施行は2027年4月1日の予定で、対象の病気は政令で決まります。

請求の前に、手元にそろえるもの

辞める前に、通院や健康診断の記録をそろえておく方法は、退職前に済ませたい健康診断・通院と書類のそろえ方にあります。毎月の給与明細の、控除の見方は、給与明細の見方のチェックリストで確かめられます。

窓口の番号を、手元に控えておくだけでも、気持ちが少し軽くなるよ。

よくある質問

看護師が仕事中にけがをしたら、労災になりますか?

厚生労働省は、業務を原因とするけがを業務災害とし、所定労働時間内などに事業場で業務に就いている間は、特段の事情がなければ認められると説明しています。個別の判断は、労働基準監督署が調査して行います。

会社が労災の手続きに協力してくれません。

事業主の証明が得られなくても、労災の請求はできると、厚生労働省は案内しています。最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署に相談してください。請求できることと、認定されることは別です。

休業の最初の3日間は、補償がないのですか?

業務災害では、休業の初日から3日目までの待期期間について、使用者が労働基準法76条に基づき、平均賃金の60%の休業補償をします。休業補償給付は4日目から支給されます。通勤災害の待期3日は、事業主の補償責任の規定がありません。

出典・参考(公的な情報)

法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。

つぎに読む

この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。

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