妊娠・産休・育休
看護師が育休中・復帰前に退職するとき。給付と手続きで確かめる順番
更新 2026年10月23日読むのに約6分
育休の途中や復帰の前に辞めることを考えると、給付や保険、会社への連絡の順番が気になります。この記事は、辞めるか続けるかを勧めるものではなく、辞めると決めたときに確かめる順番を、制度の言葉ごとに整理します。
えっ、育休の途中で辞めるだけなのに、確かめることってこんなにあるの? と思うよね。
「育休中に辞める」を、言葉に分けて見る
育休中に辞める、というのは、別々の出来事が重なった状態です。育児休業の間は、勤め先に籍を置いたまま、働く義務がなくなっています。退職は、その勤め先との雇用を終えることです。退職の日が決まると、雇用保険、健康保険、年金、住民税の扱いが、その日を境に切り替わります。
- 育児休業:子を養育するために、勤め先に申し出て休む制度。要件を満たす申出は、事業主が拒めない(育児・介護休業法)
- 育児休業給付金:育児休業の期間について、雇用保険から支払われる給付
- 支給単位期間:育児休業を開始した日から1か月ごとの期間。給付金は、この期間ごとに支給される
- 離職日:勤務先で最後に雇用されていた日。雇用保険の資格喪失日の前日にあたる
辞める意思を伝える手続き(民法627条1項の2週間と、就業規則の期限の関係)は、退職の申し出の期限の考え方にまとめています。この記事は、その手前と先にある、給付と保険の確認に絞ります。
辞める日で変わるもの。給付・保険料・手続きを日付で並べる
育児休業給付金は、支給の対象になる休業日数が通算180日に達するまでは、休業開始時賃金日額の67%、それ以降は50%です(厚生労働省・ハローワーク「育児休業等給付の内容と支給申請手続」、2026年8月1日改訂版)。この給付は、支給単位期間の途中で離職した場合、離職日(資格喪失日の前日)までが支給対象になります。2025年3月31日以前に離職した人は、資格喪失日の属する支給単位期間の前の期間までが対象でした。古い解説との違いに、注意します。
給付金の申請には、事業主が証明する書類(休業開始時賃金月額証明書など)が要るため、会社の担当に早めに伝えます。初回の申請の期限は、育児休業開始日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日までです。
育児休業中は、事業主が申出をすれば、健康保険と厚生年金の保険料が、本人負担分も会社負担分も免除されます(健康保険法159条、日本年金機構)。免除の期間は、将来の年金額を計算するときに、保険料を納めた期間として扱われます。退職して被保険者の資格を失えば、その後の期間は免除の対象になりません。退職後の保険料の細かな扱いは、加入先に確かめます。
退職後に、期限つきで動くものを並べます。次の勤め先がすぐ決まらない場合に、関わります。
- 国民健康保険:資格を取得した日から14日以内に、市区町村の国保の窓口で手続き(厚生労働省)
- 国民年金(第1号被保険者):退職日の翌日から14日以内に、市区町村の窓口で手続き(日本年金機構)。1歳になるまでの子を育てる第1号被保険者は、2026年10月から始まった育児期間の保険料免除(所得要件なし・最大12か月)を、市区町村かマイナポータルに届け出られる
- 任意継続(協会けんぽ):退職日の翌日から数えて20日以内に申出が必要。退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることが条件
- 家族の健康保険の被扶養者:手続き先は家族の勤務先。扶養の条件を満たす必要がある
雇用保険の基本手当の受給期間は、原則として離職の翌日から1年間です。妊娠・出産・育児などで30日以上働けない場合は、受給期間を延ばせます(最長3年)。育児のために働けない期間が続く場合に当たるかどうかは、ハローワークで確かめます。
日付が多くて、頭の中で絡まりそうだね。次は、産休のうちに辞める場合を分けてみよう。
産休のうちに辞める場合と、育休に入ってから辞める場合
出産手当金は、健康保険の給付です。出産の日以前42日(多胎は98日)から、出産の日後56日までの間に、休んで給与が支払われなかった期間に支給されます(健康保険法102条)。ハローワークの給付とは別なので、加入している保険者に聞きます。出産手当金の期間は産後56日で終わるため、育児休業に入ってからの期間は、対象ではありません。
退職後も出産手当金を受けられる継続給付には、2つの条件が両方必要です。資格喪失日の前日までに、任意継続の期間を除く被保険者期間が継続して1年以上あること。資格喪失日の前日に、出産手当金を受けている、または受けられる状態にあること。協会けんぽは、休職中(有給休暇を含む)のまま退職した場合は受けられるが、退職日に出勤した場合は、資格喪失後の出産手当金は受けられない、と説明しています。挨拶のために退職日に出勤する場合は、この点に注意します。
出産育児一時金は、2023年4月1日以降の出産で、産科医療補償制度に加入している医療機関での在胎週数22週以降の出産なら、1児につき50万円です(協会けんぽの説明)。資格喪失後に受ける場合は、任意継続の期間を除く被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失後6か月以内に出産することが条件で、同じ出産での支給は1回のみです。すでに出産を終えている場合は、直接支払制度を使って出産費用が50万円を下回ったときの差額の申請(おおむね3か月後に書類が届くと協会けんぽは説明)が、残っていないかを見直します。協会けんぽ以外の加入先は、扱いを個別に確かめます。なお、2026年6月に、出産費用の自己負担をなくす方向の健康保険法などの改正法が成立しました。施行日は公布後2年以内に政令で決まり、それまでは出産育児一時金(50万円)の仕組みです。
返金の話・「辞めてほしい」・育休中の転職。迷いやすい3つの場面
「育休給付金を受けたあとに辞めたら、返さないといけないのか」という疑問があります。都道府県労働局・ハローワークのリーフレットは、育児休業給付は職場復帰を前提とした給付で、育児休業の当初からすでに退職を予定している人は支給対象にならない、と書いています。一方で、受給中にやむを得ず離職することになった場合は、2025年4月1日以降、離職日まで支給対象とする取扱いに変わっています。受給中の離職そのものを理由に、受け取った給付金を返すという記載は、このリーフレットには見当たりません。分かれ目は、育休を始めた時点で、すでに辞めると決めていたかどうかです。
会社から、休業中に払った賃金や手当、資格取得の費用などを返すよう求められる場面もあります。労働基準法16条は、使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない、と定めています。求められた返金がこれに当たるかは、契約の中身で変わり、この記事では判断できません。
反対に、会社から辞めてほしいと言われた場合は、事情が違います。育児休業の申出をしたことや、休業したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、育児・介護休業法10条で禁止されています。妊娠中・出産後1年を経過しない女性への解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由としないことを証明しない限り無効です(男女雇用機会均等法9条4項)。産前産後の休業の期間とその後30日間は、解雇が禁止されています(労働基準法19条)。
退職を勧められたり、パートへの変更を勧められたりして、表面上は同意したように見えても、労働者の真意に基づかないと認められる場合は、不利益取扱いに当たると、厚生労働省は説明しています。判断が分かれる場面なので、署名の前に、マタハラの相談先の順番にある窓口へ相談します。
育休中に次の職場を探す場合は、上のとおり、育休の当初から退職を予定していたと見られないかが給付に関わります。動く前に、ハローワークと、加入している保険者に確かめます。探し方は、転職サービスの選び方と使い分けにあります。
ここが分かれ道だよ。辞める理由が夜勤や時間なら、復帰後の働き方を変える制度も、先に見られるからね。
確認の順番を、サイクルにして動く
確認は、一度で終わりません。退職の日が動くと、給付の対象になる期間も、保険の切り替えの期限も、一緒に動くためです。就業規則を読む、会社の担当に聞く、ハローワークや保険者に確かめる、退職日を決める、という順に進め、日が動いたら最初に戻ります。
- 就業規則を読む期限・申し出の方法
- 会社の担当に聞く証明書類・免除の申出
- 窓口で確かめるハローワーク・保険者
- 退職日を決める候補は2つ並べる
日付を動かすたびに、順番を見直そうね。
育児休業給付金を受けている途中で、退職を考えています。離職日までの分が対象になると聞きましたが、手続きの順番と、必要な書類を教えていただけますか。
ハローワークや会社の担当に、確認するときの言い方の例
迷ったときのまず頼れるのは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーです(土日祝日・年末年始を除く平日、無料、予約は不要)。育児・介護休業法に関する相談は、雇用環境・均等部(室)も窓口として案内されています。辞める理由が、夜勤や勤務時間にあるなら、復帰後の働き方を変える制度(短時間勤務、深夜業の制限など)を育休明けの勤務を決める手順で確かめてから、決めることもできます。
確かめる順番がつかめたら、少し気持ちが軽くなるね。あとは窓口で一つずつ聞くだけだよ。
よくある質問
育休中に辞めると、育児休業給付金はどうなりますか?
ハローワークのリーフレットでは、支給単位期間の途中で離職した場合、離職日(資格喪失日の前日)までが支給対象と説明されています。2025年3月31日以前に離職した人は、取扱いが違いました。手続きは、事業所を管轄するハローワークで確かめます。
育休に入ってから辞めても、出産手当金は受けられますか?
出産手当金は、出産の日後56日までの休業が対象で、育児休業に入ってからの期間は対象ではありません。産休のうちに辞める場合の継続給付には、被保険者期間と、退職日の前日の状態などの条件があります。加入先の保険者に確かめます。
育休中に会社から辞めてほしいと言われました。応じるしかないですか?
育児休業をしたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、禁止されています。真意に基づかない同意は、不利益取扱いに当たりうると、厚生労働省は説明しています。署名の前に、総合労働相談コーナーなどへ相談できます。
出典・参考(公的な情報)
- 育児休業等給付の内容と支給申請手続(2026年8月1日改訂版)(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク)
- 育児休業給付を受給中に離職した皆さまへ(リーフレット)(都道府県労働局・ハローワーク)
- 育児・介護休業法のあらまし(令和7年4月1日、10月1日施行対応)(厚生労働省)
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 第10条・第26条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 男女雇用機会均等法 第9条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働基準法 第16条・第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第627条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 健康保険法 第99条・第102条・第104条・第106条・第159条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 出産手当金(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 出産育児一時金(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 健康保険法等の一部を改正する法律の成立について(令和8年6月18日)(厚生労働省)
- 従業員が育児休業等を取得・延長したときの手続き(保険料の免除)(日本年金機構)
- 国民年金保険料の育児期間の免除制度(日本年金機構)
- 基本手当について(ハローワークインターネットサービス(厚生労働省))
- 国民健康保険の加入・脱退について(厚生労働省)
- 国民年金に加入するための手続き(日本年金機構)
- 任意継続(給付と手続き)(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。