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心とからだのケア

看護師の医療事故とは。医療事故調査制度の対象範囲と責任の考え方

更新 2026年10月23日読むのに約6分

医療事故という言葉を聞くと、自分の責任を問われるのではと不安になることがあります。この記事は、制度の仕組みと範囲、責任の枠組みを整理するもので、個別の事故の責任を判断するものではありません。

制度の名前を聞くだけで、どきっとする人もいるよね。

制度でいう「医療事故」は、意味が絞られている

2026年10月時点の現行条文で、医療法6条の10は、病院等の管理者が報告しなければならない医療事故を定めています。医療事故とは、当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産であって、管理者がその死亡または死産を予期しなかったものです。

つまり、制度の対象は、死亡または死産で、かつ管理者が予期しなかったものに限られます。日常で使われる「医療ミス」「医療事故」という言葉より、ずっと範囲が狭い点に注意が必要です。ヒヤリハット、後遺症、予期していた死亡は、この制度の対象には入りません。

制度の対象かどうか、見分けの目安
状況制度の対象か理由(条文・資料の書き方)
医療に起因する(疑い含む)、予期しなかった死亡・死産対象になりうる6条の10の定義に当たる
予期していた死亡対象外管理者が予期しなかったもの、に当たらない
ヒヤリハット対象外死亡・死産ではない
後遺症が残った対象外死亡・死産ではない

あてはまるかどうかを判断するのは、病院の管理者です。個別の事例は、勤め先の窓口で確かめます。

言葉は同じでも、制度の対象はずっと狭いんだね。

もう一つ大切なのは、「医療事故に当たるかどうか」を判断するのが、病院の管理者である点です。厚生労働省の資料でも、該当するかの判断は、医療機関の管理者が行うと整理されています。現場の看護師が、「これは報告の対象」と決めるものではありません。目の前で起きたことが気になるときは、まず、上司や院内の医療安全の担当に伝えます。

なお、医療法10条は、医業を行う病院の開設者に、臨床研修等修了医師に病院を管理させるよう定めています。この制度の判断も、その管理者が行います。条文上、看護師は病院の管理者にはなれません。

報告から調査までの流れを、順に見る

制度の流れを、条文と厚生労働省の資料から、順番に見ていきます。大まかには、判断、遺族への説明、報告、院内調査、結果の報告と説明、の順です。

医療事故調査制度の、大まかな流れ
  1. 管理者が判断医療事故に当たるか
  2. 遺族へ説明報告の前に
  3. センターへ報告遅滞なく
  4. 院内調査原因を明らかにする
  5. 結果を報告・説明センターと遺族へ

流れは、管理者を軸に動くよ。

医療法6条の10は、管理者が医療事故が起きた場合に、遅滞なく、日時・場所・状況などを、医療事故調査・支援センターに報告しなければならないと定めています。報告の前に、遺族に対して、厚生労働省令で定める事項を説明することも求められます(遺族がない場合などを除く)。

6条の11は、管理者が速やかに原因を明らかにするための調査(医療事故調査)を行い、終了したときは、遅滞なく結果をセンターに報告し、遺族に説明するよう定めています。調査は、医療事故調査等支援団体に支援を求めることができます。厚生労働省の資料では、支援団体の例として、日本看護協会と都道府県看護協会、日本助産師会などが挙げられています。

院内調査では、省令・通知に項目が示されています。診療録の確認、解剖または死亡時画像診断、当該医療従事者などの関係者へのヒアリング、医薬品・医療機器・設備等の確認、血液・尿等の検査などです。これらは、必要な範囲で選んで行うもので、全部をやると決まっているわけではありません。

6条の12は、管理者が医療の安全を確保するための指針の策定や、従業者への研修の実施などの措置を取るよう定めています。看護師にとって身近なのは、院内の研修や、報告の仕組みとして現れる部分です。インシデントの報告と振り返りの型は、インシデント対策の記事に分けてあります。

制度の対象にならない出来事でも、院内で報告し、振り返る仕組みは、別にあります。インシデントやヒヤリハットの報告がそれです。制度の対象かどうかと、報告するかどうかは、分けて考えます。対象かどうか迷うことでも、院内の手順に沿って、まず報告します。

ここは、メモを取りながら読んでね。覚えるのは、あとで大丈夫。

不安になったら、そこで止めていいからね。

目的は再発防止。個人の責任追及のための制度ではない

厚生労働省の資料は、制度の目的を、医療の安全を確保し、医療事故の再発防止を図ることと説明しています。通知には、個人の責任を追及するためのものではない、という趣旨が明記されています。また、調査の対象者から当該医療従事者を除外しないこと、調査の過程でできる限り匿名性の確保に配慮することも示されています。

この制度がするもの

医療事故の原因を調べ、再発防止につなげる。調査結果は、センターと遺族に報告・説明される。

この制度が決めないもの

個人に責任があるかどうか。民事・刑事・行政処分の責任判断は、別の手続きで扱われる。

ここで分けて考えたいのは、「制度の調査」と「責任の判断」が、別のものだという点です。この制度の調査は、再発防止のための調査です。個別の事故で、誰にどんな責任があるかは、この制度では決まりません。責任の問題は、次の節で見る別の枠組みで扱われます。

一方で、調査の過程で、現場にいた看護師が、ヒアリングを受ける場面はありえます。そのときの伝え方や、記録の扱いは、勤め先によって異なります。どう答えるか、何を準備するかといった個別の対応は、この記事では示しません。法的な助言は、専門の窓口で受けるものです。

医療事故の責任は、民事・刑事・行政処分の3つに分かれる

「医療事故 責任」で調べる人が知りたいのは、自分にどんな責任が及びうるのか、だと思います。個別の事案の見通しはこの記事では示せませんが、法律上の枠組みは3つに分かれます。どれも、事故調査制度とは別の手続きです。

  • 民事の責任:損害の賠償の問題です。民法709条は、故意または過失で他人の権利を侵害した者の賠償責任を定めています。715条は、事業のために人を使う者(病院の開設者など)が、被用者が事業の執行で第三者に加えた損害を賠償する責任(使用者責任)を定めています。同条3項は、使用者から被用者への求償を妨げないとしています
  • 刑事の責任:刑法211条は、業務上必要な注意を怠って人を死傷させた者を、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金としています(業務上過失致死傷)
  • 行政処分:保健師助産師看護師法14条により、罰金以上の刑に処せられたときなど9条各号に当たる場合や、品位を損するような行為があった場合に、厚生労働大臣は看護師に戒告・3年以内の業務停止・免許の取消しの処分ができます。15条の2により、戒告や業務停止を受けた人には、再教育研修が命じられることがあります

行政処分の考え方は、医道審議会の看護倫理部会が「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」として公表しています。医療過誤による業務上過失致死傷については、処分の程度は基本的に司法処分の量刑などを参考に決めるとされています。そのうえで、医療過誤は複合的な管理体制上の問題の積み重ねで起きることも多く、一人の責任に帰することができない場合もある、と書かれています。病院の管理体制、ほかの医療従事者の注意義務違反の程度、学び続けていたかなども考慮するとされています。

賠償への備えとしては、日本看護協会に「看護職賠償責任保険制度」があり、制度の研修会は会員(入会見込者を含む)を対象に案内されています。加入の条件や補償の範囲は、所属する都道府県の看護協会か日本看護協会で確かめます。勤め先の病院が入っている保険で、看護師個人がどこまで守られるかは病院ごとに違うため、医療安全の担当や総務に聞いておきます。事故に関わって不安なとき、法的な見通しを聞きたいときは、弁護士に相談します。各地の弁護士会が法律相談の窓口を設けています。

勤め先で確かめておきたいことと、話せる窓口

制度は、病院の管理者が動かすものです。看護師にできることは、条文を暗記することではなく、自分の勤め先で、何が決まっているかを確かめておくことです。確かめる相手は、師長、医療安全の担当部署、研修の資料などです。

話すときに忘れたくないのは、守秘の決まりです。保健師助産師看護師法42条の2は、看護師が正当な理由なく、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めており、看護師でなくなった後も同じとされています。調査の場に必要な範囲の話は、勤め先の手順に沿って行い、職場の外での話し方は、愚痴を聞いてほしいときの記事の考え方が参考になります。

勤め先で、確かめておくチェック

確かめた内容は、自分のノートに、日付つきで書いておくと、不安なときに見返せます。書き方は、記録ノートが使えます。調査や、ヒアリングの場面で不安なときは、一人で抱え込まず、上司や、相談できる人に先に伝えます。個別の責任や、法的な判断の相談は、専門の窓口で受けます。

自分のミスや、医療事故への不安で、眠れない・食べられない日が続くときは、制度の理解より先に、休むことを優先します。気持ちの落ち込みから戻る手順は、ミスが怖いとき、落ち込みから戻るための手順にあります。眠れない日が重なるときは、つらいときの窓口に話してみてください。

ひとりで抱えそうなら、窓口に電話をかけるのも、選べるよ。

制度の形を知っておくだけで、少し落ち着く日もあるね。

よくある質問

医療事故調査制度は、看護師個人の責任を問う制度ですか?

厚生労働省の資料は、制度の目的を、医療の安全の確保と再発防止と説明しています。通知には、個人の責任を追及するためのものではない、という趣旨が明記されています。個別の責任判断は、別の手続きで扱われます。

ヒヤリハットや、予期していた死亡も、制度の対象ですか?

制度の対象は、医療に起因する(疑い含む)死亡または死産で、管理者が予期しなかったものです。ヒヤリハットや、予期していた死亡は、この制度の対象には入りません。当てはまるかどうかを判断するのは、病院の管理者です。

「医療事故」に当たるかどうかは、誰が判断しますか?

病院の管理者が判断します。厚生労働省の資料にも、該当するかどうかは、医療機関の管理者が判断すると整理されています。現場の看護師は、気になることを上司や医療安全の担当に伝えます。

医療ミスをしたら、看護師免許はどうなりますか?

保健師助産師看護師法14条では、罰金以上の刑に処せられたときなどに、厚生労働大臣が戒告・3年以内の業務停止・免許の取消しの処分をできるとされています。医療過誤の処分の程度は、司法処分の量刑などを参考に、管理体制の問題も考慮して決めるという考え方が公表されています。個別の見通しは弁護士に相談します。

出典・参考(公的な情報)

法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。

つぎに読む

この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。

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