ミス・自信
看護師のインシデント対策。報告と振り返りの型で再発を減らす
更新 2026年10月23日読むのに約6分
インシデントのあとは、報告も振り返りも、何から書けばよいか分からなくなります。書く順番と、振り返りの見方を決めておくと、同じことを減らす材料に変わります。
インシデントのあとは、胸がぎゅっと重くなるよね。
起きた直後に、確かめること
インシデントの直後は、頭が真っ白になって、何から動けばよいか分からなくなる人が多いものです。まず確かめるのは、書類のことより先に、いまの患者さんの状態と、必要な対応が動いているかです。報告書は、そのあとに書きます。
報告は、早く・事実だけで伝えるのが基本です。うまく説明しようとして時間をかけるより、分かっている範囲を先に伝えるほうが、周りが動きやすくなります。分からないことは、「そこはまだ分かりません」と、そのまま伝えて大丈夫です。
第一報は、短く伝えるのがコツです。「どの患者さんか・何が起きたか・いまの状態・いま必要なこと」の順に話すと、聞く側が判断しやすくなります。長く説明しようとして言葉に詰まったら、「状況を整理してから、改めてお話しします。まず、いまの状態だけ伝えます」と区切って、先に動いてもらいます。
報告書は、事実と推測を分けて、順番を決めて書く
報告書で迷いやすいのは、事実と推測が混ざることです。「たぶん焦っていたから」「忙しかったせいで」と書き始めると、読む側は何が起きたのか分からなくなります。起きたことだけを時系列で書き、推測は別の欄に分けます。
- 1 いまの状態と、すぐに行った対応
- 2 何が起きたか(時刻・場面・行ったことだけ)
- 3 気づいたきっかけと、伝えた相手
- 4 要因として考えられること(推測は分けて書く)
- 5 次に変えたいこと(1つ)
推測は、事実と別の行に書いておこう。
書くときは、患者さんが特定できる書き方を避け、職場が決めた様式に沿います。様式がある職場では、その欄の順番を優先してください。上の順番は、自分の頭を整理するためのもので、様式の代わりではありません。
夜間は一人で確認する場面が多く、この手順のこの確認が抜けやすい状況でした。次は二人で確認する形にできるか、相談させてください。
報告のあとの、次の一手を伝える例
最後の「次に変えたいこと」は、1つに絞ります。たくさん書くと、どれも実行されません。「気をつける」「確認を徹底する」のような、行動にならない言葉は避け、「声に出して指さしで確認する」のように、翌日から実行できる行動にします。
書くのは勇気がいるのに、ここまで向き合っていて、えらいよ。
続きは、振り返りの見方だよ。
振り返りは、人ではなく条件を見る
振り返りの目的は、同じことが起きにくい形を作ることです。「自分の不注意だった」で終わらせると、次に似た条件がそろったとき、誰でも同じことが起こり得ます。人を責める見方と、条件を見る見方を並べると、違いがはっきりします。
人を責める見方
「集中が足りなかった」で終わる。反省は深くなるものの、次に変えることが見つからず、同じ条件が残る。
条件を見る見方
時間帯・人数・手順・物の置き場所など、重なった条件を書き出す。変えられる条件が見つかり、次の行動が決まる。
条件は、4つの目線で見ると書き出しやすくなります。自分(体調・睡眠・経験)、もの(機器・薬剤・表示)、まわり(人数・忙しさ・声かけ)、手順(決まりごと・確認の順番)です。4つのうち、すぐ変えられるのは、もの・まわり・手順のどれかであることが多く、自分一人の気持ちを変えるより、行動に落としやすくなります。
- 事実を並べる時刻順に
- 条件を探す自分・もの・まわり・手順
- 対策を1つ決める翌日からできる形
- 見直す日を決める1週間後など
対策は、多くなくていいんだよ。
「自分」の目線の中に、睡眠や疲れも入れておきます。厚生労働省の睡眠ガイド2023は、睡眠の不調があるときは病気が潜んでいる可能性にも留意するよう書いています。ミスが続く時期は、勤務の間隔や連続夜勤、眠れているかも一緒に見ます。日本看護協会のガイドラインは、勤務と勤務の間隔を11時間以上あけるなど、勤務編成の目安を示しています。自分の勤務表を数字で見る方法は、夜勤の回数を数字で伝える方法にあります。
振り返りの面談では、責められているように感じて、言葉が出なくなることがあります。そんなときは、準備したメモを読み上げる形で十分に伝わります。事実を並べたメモがあれば、気持ちが先に立っても、話が前に進みます。対策が決まったら、1週間後に、実行できたかを一緒に確かめます。実行できなかったときは、意志が弱かったのではなく、対策が重すぎた可能性があるため、小さくして立て直します。
怖さ・始末書・ミスが続くとき
インシデントのあと、出勤が怖くなったり、同じ場面を何度も思い出したりすることがあります。夜に眠れなくなる人もいます。怖さは、責任感の裏返しでもあり、気持ちが弱いわけではありません。ただ、続くときは、一人で抱えず、相談先を使ってください。眠れない夜が続くときは眠れない夜が続くとき、できることと受診の目安に、受診の目安と窓口の案内があります。気持ちのつらさを話したいときは、働く人向けの「こころの耳」の電話・SNS相談などが使えます。番号と受付時間はつらいときの窓口にまとめています。
インシデント報告書と始末書は、目的が違う書類です。報告書は、何が起きたかを共有して再発を防ぐためのもので、上の順番で事実を書きます。始末書は、反省やおわびを書かせる文書として使われることが多く、求められる根拠は、就業規則の懲戒の項目に書かれているのが一般的です。始末書を求められたら、まず就業規則で、どの定めにもとづくのかを確かめます。報告書と同じ内容を、反省の言葉として書き直す必要があるのかも、上司に聞いてかまわない点です。納得できないときや、強く求められて困るときは、労働相談の窓口に相談できます。
ミスが「多い」と感じるときは、自分を責める前に、記録で数えます。いつ・どの場面・どの勤務の日かを1か月分書くと、時間帯や勤務の並びに偏りが見つかることがあります。偏りが見つかれば、個人の注意力ではなく、勤務や手順の話として相談できます。記録は、日付・勤務(日勤・夜勤・休み)・時間帯・場面・起きたことの5項目があれば足ります。インシデントだけでなく、ヒヤリとした場面も一行入れておくと、偏りが見えやすくなります。ミスが怖くて動けなくなる気持ちは、自信がないときの記事でも扱います。ミスを引きずる気持ちはミスを引きずるときに、怖さの整理はミスが怖いときにあります。
同じことを減らしたい気持ちがあれば、それだけで大きな前進だよ。
よくある質問
インシデントが多いと、向いていないのでしょうか?
件数だけでは決められません。いつ・どの場面・どの勤務かを記録して、条件の偏りがないかを見ます。勤務の間隔や睡眠も、見直す材料です。
インシデント報告書の書き方で、いちばん大事なことは?
事実と推測を分けることです。起きたことを時系列で書き、考えられる要因は別の欄にします。職場の様式がある場合は、その順番に従ってください。
インシデントのあと、始末書は書かなければなりませんか?
再発防止のための報告書と、反省を書く始末書は別の書類です。始末書を求める根拠は就業規則の懲戒の項目にあるのが一般的なので、まずどの定めにもとづくのかを確かめてください。納得できないときは、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます。
出典・参考(公的な情報)
- 健康づくりのための睡眠ガイド2023(厚生労働省)
- 看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン(2013年)(公益社団法人 日本看護協会)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 働く人の「こころの耳電話相談」(こころの耳(厚生労働省))
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。