退職後のお金
看護師の退職金にかかる税金の基本。退職所得控除の計算の流れ
更新 2026年10月23日読むのに約6分
退職金は、もらえる額だけでなく、税金で手元にいくら残るのかも気になります。この記事では、退職所得控除という仕組みを中心に、計算の流れと、手続きで確かめることを整理します。
退職金って、そのまま全部は受け取れないのかな。
気になって調べはじめたこと、それだけで一歩だよ。
退職金の税金は、「控除を引いて、半分にする」計算が基本
退職金(退職手当)は、「退職所得」という区分で、次の式から金額を出します。国税庁によると、退職所得の金額は、(収入金額 − 退職所得控除額)× 2分の1です。収入金額は、源泉徴収される前の金額です。
退職所得に含まれるのは、勤め先の退職手当だけではありません。社会保険制度などによる一時金、確定拠出年金の老齢給付金としての一時金、解雇予告手当、未払賃金なども、国税庁は退職所得に含まれるものとして挙げています。
退職金があるかどうか、額がどう決まるか、いつ支払われるかは、勤め先の就業規則や退職金規程の定めによります。税金の計算より先に、まず規程で、支給の条件と時期を確かめます。退職金そのものの相場や、規程の読み方は、看護師の退職金にまとめています。
- 収入金額源泉徴収される前の退職金
- 勤続年数端数は切り上げて数える
- 退職所得控除勤続年数から計算する
- 差し引いて半分(収入 − 控除)× 1/2
- 源泉徴収申告書の有無で扱いが変わる
式は2つだけ。順番に当てはめていこう。
勤続年数の端数は、切り上げて数えます。国税庁の例では、勤続10年2か月は11年として計算します。1年未満の端数は、1年に切り上げる扱いです。
退職所得控除は、勤続年数で決まる(20年を境に式が変わる)
退職所得控除額は、勤続年数をAとすると、勤続20年以下は40万円 × A(最低80万円)、20年を超える場合は、800万円 + 70万円 ×(A − 20年)です。障害者になったことが直接の原因の退職の場合は、100万円が加算されます。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 計算の中身 |
|---|---|---|
| 1年 | 80万円 | 最低額の80万円が適用 |
| 3年 | 120万円 | 40万円 × 3 |
| 8年 | 320万円 | 40万円 × 8 |
| 20年 | 800万円 | 40万円 × 20 |
| 25年 | 1,150万円 | 800万円 + 70万円 × 5 |
| 30年 | 1,500万円 | 800万円 + 70万円 × 10 |
国税庁タックスアンサーNo.1420(令和8年4月1日現在)の式から作成。実際の控除額は、勤め先や税務署で確かめます。
20年を超えると、1年ごとの増え方が大きくなるんだね。
例:勤続12年2か月で、退職金が500万円の場合。勤続年数は、端数を切り上げて13年。退職所得控除額は、40万円 × 13 = 520万円です。収入金額の500万円は、控除額の520万円以内なので、差し引きはゼロ以下になり、課税される金額が出ない計算になります。
例:勤続8年で、退職金が600万円の場合。控除額は、40万円 × 8 = 320万円。差し引き280万円の半分で、退職所得の金額は140万円です。この金額をもとに、所得税が計算されます。
例:勤続25年で、退職金が1,500万円の場合。20年を超えるので、控除額は、800万円 + 70万円 × 5 = 1,150万円。差し引き350万円の半分で、退職所得の金額は175万円です。勤続年数が長いほど、控除が厚くなる形なので、同じ退職金でも、勤続年数で結果が大きく変わります。
以上は、計算の練習用の例です。実際の退職金の額・勤続年数・税額は、勤め先の経理や税務署で確かめてください。
入職日と退職日、勤続の数え方は、メモに残しておこう。
式さえ分かれば、計算はあとからいつでもできるよ。
勤続5年以下は、半分にならない部分がある
勤続年数が短い人には、特例があります。役員等以外で勤続5年以下の退職手当等(短期退職手当等)では、控除後の額のうち、300万円を超える部分に、2分の1の計算が使えません。
例:勤続4年で、退職金が600万円の場合。控除額は、40万円 × 4 = 160万円。差し引きは440万円です。このうち、300万円までは半分の150万円、300万円を超える140万円は半分にならずそのままなので、退職所得の金額は290万円になります。
転職を重ねた人は、いまの勤め先での勤続年数が5年以下かどうかを、まず確かめます。この特例に当たるかどうかや、細かい判定は、国税庁のタックスアンサーと、税務署の相談窓口で確認してください。
申告書を出したかどうかで、源泉徴収と確定申告が変わる
退職金を受け取るとき、勤め先に「退職所得の受給に関する申告書」を出しているかどうかで、扱いが分かれます。
申告書を出している
支払う側の勤め先が、退職所得控除を反映して源泉徴収します。原則として、退職金のための確定申告は要りません。
申告書を出していない
支払金額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算します。国税庁の例では、800万円なら1,633,600円です。
20.42%には、復興特別所得税が含まれています。復興特別所得税は2047年12月31日までの支払分が対象で、2027年以後は防衛特別所得税が創設され、合計の税率は変わらない、と国税庁のページにあります。
医療費控除などで確定申告をする年は、退職所得も記載する必要がある、と国税庁は説明しています。申告書の様式と、出す時期は、勤め先の経理や人事に確認します。出し忘れると、源泉徴収の扱いが変わる点が、いちばん大きな違いです。
退職後に確かめる書類と、記録の残し方
年の途中で退職した場合、勤め先は、退職の日以後1か月以内に、源泉徴収票を作成して本人に交付しなければなりません(所得税法226条。国税庁も同様に案内しています)。退職手当等の支払をする者も、同様です。電子で受け取る場合は、本人の承諾が要るので、紙で欲しいときは、早めに伝えます。
年の途中で退職して、年末までに再就職しない場合は、原則として年末調整の対象外になります(国税庁No.2665。死亡退職など例外があります)。給与の精算は、自分で確定申告をするか、再就職先で年末調整を受ける形になります。退職所得が源泉徴収で済んでいても、給与の分は別の手続きです。
離職票や源泉徴収票など、退職でもらう書類は退職でもらう書類の一覧に、最終出勤日の決め方は退職前の有給消化と最終出勤日の決め方にまとめています。退職金の受け取りは、これらの段取りの中の1つとして、日程を置いておきます。
退職金には、所得税とは別に住民税もかかります。東京都北区などの案内によると、退職金の住民税は、ほかの所得と分けて計算する分離課税で、退職した年の1月1日に住んでいた市区町村が課税します。税額は、退職所得の金額(所得税と同じ、控除を引いて半分にした額。千円未満切り捨て)に、市区町村民税6%と道府県民税4%、合わせて10%をかけた額です。支払う側の勤め先が、退職金から差し引いて納める特別徴収なので、自分で納める手続きは通常ありません。
例:勤続8年で退職金600万円(退職所得の金額140万円)なら、住民税は140万円×6%=8万4,000円と、140万円×4%=5万6,000円で、合計14万円です。退職金とは別に、前の年の給与にかかる住民税が、退職後に請求されることがあります。その仕組みは退職後の住民税にまとめています。
一時金で受け取るか、年金で受け取るかのような、受け取り方の選び方は、個別の事情で変わるので、ここでは扱いません。勤め先と、税務署の相談窓口で確認します。
細かい計算、お疲れさま。式を確かめておく人は、強いよ。
退職までの段取りは、順番に並べれば、ちゃんと形になるよ。
よくある質問
退職金には、いつも税金がかかりますか?
退職金の収入金額が、退職所得控除額以内なら、差し引きがゼロ以下になり、課税される金額が出ない計算になります。実際の額は、勤め先の経理や税務署で確かめます。
勤続年数の端数は、どう数えますか?
切り上げて数えます。国税庁の例では、勤続10年2か月は11年です。同じ法人内の異動を通算するかなどは、勤め先に確認します。
受給に関する申告書を出さないと、どうなりますか?
支払金額の20.42%が源泉徴収され、確定申告で精算する形になります。国税庁の例では、800万円なら1,633,600円です。
出典・参考(公的な情報)
- No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(国税庁)
- No.2732 退職手当等に対する源泉徴収(国税庁)
- No.2665 年末調整の対象となる人(国税庁)
- No.7411 給与所得の源泉徴収票の提出範囲と提出枚数等(国税庁)
- 所得税法 第226条(源泉徴収票の交付)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 退職所得にかかる住民税(東京都北区)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。