後輩指導
看護師の後輩指導。注意の言い方と、任せ方の5段階を手順で
更新 2026年10月23日読むのに約6分
後輩に注意するのは、言い方ひとつで、伝わるか、萎縮させるかが分かれるので、気が重くなります。この記事では、注意の言い方の順番と、任せる量を少しずつ増やす5段階を、手順で整理します。
後輩に注意するの、苦手…って、ひとりで抱えてない?
注意する前に、立ち止まって確かめる3つ
たとえば、後輩が記録を書き忘れたことに気づいた場面を考えます。あとから見つけたのなら、まず「書いてなかった」のか「別の場所に書いた」のかを、記録を見直して確かめます。確かめずに口を開くと、書いてあったのに疑われた、という気持ちだけが後輩に残ります。注意は、確かめたあとでも遅くありません。
気になったその場で口を開く前に、3つ確かめます。言い方を工夫する前に、この確認が抜けていないかを見ます。
- 自分が見た事実か(又聞きや、そう見えただけではないか)
- 安全に関わる急ぎの話か(急ぐならその場で、短く止める)
- やり方を、一度でも見せたことがあるか(教えていないことは、注意の前に教える)
安全に関わる場面は別です。患者さんに影響しそうなときは、後回しにせず、その場で「待って」と止めます。その場で止めたあと、落ち着いた場所で、改めて話します。それ以外の、急がない内容は、時間と場所を選べます。
後輩が、そもそも質問しにくい空気の中にいないかも、確かめます。質問しにくさが、ミスの手前にあることもあります。質問する側から見た事情は、後輩が質問しにくいと感じる理由(質問する側の記事)で整理しています。
ここが分かれ道。順番を決めておくと、感情が先に出にくいよ。
注意の手順:確かめる、場所、伝える、聞く、決める
注意は、5つの順番に並べると、相手に伝わりやすくなります。順番は、感情ではなく、事実から入ることが骨組みです。
- 事実を確かめる自分で見たか
- 場所と時間を選ぶ人前を避ける
- 事実と影響を伝える何が・どうなるか
- 言い分を聞く理由を知る
- 次の行動を決めるいつ・何をするか
最後は、責めるのではなく、次の約束で終えよう。
2つ目の「場所と時間」は、人前を避けることが基本です。ほかの職員や患者さんの前で注意されると、内容が正しくても、恥ずかしさのほうが残ります。短い時間でも、詰所の隅や、記録の合間に声をかけます。
3つ目の「事実と影響」は、感想や性格の評価を入れません。「だらしない」ではなく、「確認が1回抜けていた」。「やる気がない」ではなく、「報告が、終わってから届いた」。影響は、「患者さんの名前の確認が抜けると、取り違えにつながる」のように、起こり得ることを短く添えます。
4つ目の「言い分を聞く」は、省かれがちな段階です。理由を聞くと、忙しさ、教わっていなかったこと、緊張などが分かり、次の行動の組み立てが変わります。聞いたうえで、5つ目で、いつ、何を、どう変えるかを決めて終えます。
言いがちな言い方
「なんで何回言っても同じなの」「やる気あるの?」
事実で伝える言い方
「今日の点滴の確認が1回抜けていたよ。名前を声に出して確かめるところから、次はいっしょにやってみよう」
任せ方の5段階:見せる、いっしょに、見守る、任せる、振り返る
任せるときは、一気に手放さず、5つの段階で少しずつ手を離します。年数ではなく、その作業を何回やったか、安全に関わる度合いで、段階を決めます。
- 1 見せる:まず、自分がやって見せる。「今から、ここを見て」と一言添える
- 2 いっしょにやる:後輩が手を動かし、横で声をかける。止めるのは、安全に関わるときだけ
- 3 見守る:後輩が一人でやり、離れたところから見ている。終わったあとに、一言だけ伝える
- 4 任せて、報告を受ける:後輩に任せ、終わったら報告してもらう。途中の確認は、後輩のほうから
- 5 任せきって、振り返る:最後に、いっしょに振り返る。うまくいった点を、実際にあったことから1つ言葉にする
段階ごとの声かけの例です。1は「ここを見ていてね」、2は「次は手を動かしてみよう。私は横にいるね」、3は「終わったら、ひとこと教えて」、4は「報告だけ、あとで聞くね」、5は「うまくいったところと、次に変えるところを、一つずつ話そう」。声に出すと、いまどの段階にいるかを、後輩も自分も確かめられます。
段階は、行ったり来たりします。上がるのが早すぎたと分かれば、一つ戻ります。戻ることは、後退や失敗ではありません。新しい作業や、久しぶりの作業のときは、1か2に戻るのが自然です。
任せた作業が途中でうまくいかなかったときは、「やっぱり自分がやる」と取り上げずに、どこで止まったかを一緒に確かめます。取り上げると、後輩は任された経験を失い、次も同じ段階にとどまります。安全に関わる場合だけ、いったん引き取り、落ち着いてから、段階を戻して再開します。
どの段階にいるかは、勤務表とも関わります。見守りの段階の作業を、後輩が一人になる夜勤帯に当てないなど、段階と配置は一緒に考えます。シフトを組む側の工夫は、勤務表を組む手順に続けます。
- 日付・時間・場所:
- 起きたこと(事実だけ):
- 自分が伝えたこと:
- 後輩の返事・言い分:
- 次にやること・見る日:
感想より事実を。あとで、自分を助けてくれるよ。
育たない・苦手・辞めそう、と感じたとき
後輩が育たないと感じるとき、原因は3つに分けられます。教え方、本人の状況、職場の仕組みです。教え方が合わないなら、段階を戻します。本人の状況(体調、家庭、緊張)が重なっているなら、話を聞く時間が先です。職場に教育の仕組みがないなら、一人で抱える範囲を超えています。
プリセプターとして悩んでいるときは、プリセプターの悩みの整理を、チーム全体で新人を見る側の疲れは、新人教育がつらいときを読んでください。ここでは、指導する側が一人で背負わない、という前提だけ、確かめておきます。
中途で入った後輩や、年上の後輩に教える場面では、経験の差が逆転することもあります。この場合の任せ方は、1と2を短くして、この職場のやり方だけを見せ、あとは本人の経験を信頼して、3や4から始めます。年齢や経歴ではなく、この職場の手順を知っているかどうかで、段階を決めます。
苦手な後輩がいるときは、好き嫌いの気持ちを無理に消そうとしなくて大丈夫です。扱うのは、気持ちではなく、行動(事実)です。後輩が「辞めたい」と言ったときは、引き止めるより先に、聞きます。そして、自分のせいだと決めずに、上司にも状況を共有します。
少しずつ手を離せたら、それだけで十分な一歩だよ。
ひとりで背負わなくて、いいからね。
よくある質問
後輩が、何度も同じミスをします。どう伝えればよいですか?
「何回言っても」ではなく、ミスの起きる手前の手順を一つ決めて、いっしょにやるところに戻します。事実と次の約束で、短く伝えるのが基本です。
注意すると、後輩が黙ってしまいます。
言い分を聞く段階が抜けていないかを見直します。注意の長さを短くし、人前を避けて、最後は責める形ではなく、次の約束で終えます。
後輩が辞めそうです。自分の指導のせいでしょうか。
理由は、職場の体制や本人の事情など、複数のことが重なっています。自分のせいと決めずに、聞く時間をとり、上司にも共有してください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。