キャリア設計
看護師の論文・学会発表の始め方。現場の疑問から、発表までの手順
更新 2026年10月23日読むのに約6分
論文や学会発表は、現場の「なぜ?」を問いにするところから始まります。この記事では、始め方の手順と、つまずきやすい所の確かめ方をまとめます。
論文とか学会って、ちょっと遠い世界に感じるよね。
でも、現場の「なぜ?」が、はじまりになるんだよ。
論文と学会発表の違いと、小さな入口
論文は、調べたことや実践したことを、文章にまとめて、雑誌などに載せる形です。学会発表は、口頭やポスターで、集まった人に向けて発表する形です。どちらも、現場で感じた疑問や工夫を、他の人にも伝わる形に整える点では、同じです。
最初から、学会の大きな舞台を目指す必要はありません。多くの職場には、院内の発表会や、事例を共有する場があります。院内で小さく発表して、練習してから、学会に進む人もいます。入口は、次のように並べられます。
- 院内の発表会や研究会:職場の中で、まとめる練習をする場
- 事例の報告:ひとつのケースを振り返って、気づきをまとめる形
- 業務の改善の報告:やり方を変える前と後を、比べてまとめる形
- 学会のポスター発表や口頭発表:職場の外の人に向けて、発表する場
事例の報告は、ひとつのケースを、経過に沿って振り返る形です。「どんな状況だったか」「何を行ったか」「どう変わったか」「振り返って何を学んだか」の順に並べると、読む人に伝わりやすくなります。患者さんの情報は、特定されない形に整えて使います。研究の経験が少ない人は、この形から始めると、まとめる流れをつかみやすくなります。
勤め先に、研究を担当する部署や、教育の担当者がいる場合は、最初の相談先になります。どこに相談するかは職場によって違うので、まず、誰に聞けばよいかを、確かめます。
事例の報告なら、4つの順に並べるだけで形になるよ。次は、全体の手順を見ていこう。
始め方の5つの手順
- 問いを決める現場の疑問から
- 文献を読むすでに分かっていること
- 手続きを確かめる職場の決まり・倫理
- 調べてまとめるデータ・事例を整理
- 発表・投稿する抄録・要項の確認
1歩ずつ。手順1の問いが、いちばん大事だよ。
手順1の問いを決めるでは、現場で感じた疑問を、調べられる形に書き換えます。「何となく多い気がする」は、そのままでは調べにくいので、「いつ・どこで・どのくらい」に言い換えます。書き換えの例は、次の節で扱います。
手順2の文献を読むでは、同じ疑問について、すでに分かっていることを調べます。同じ内容がすでにまとめられていれば、問いを少し変えたり、自分の職場の特徴に絞ったりします。読む論文の数は、最初は数本から始めて、増やしていきます。
文献は、職場の図書室や、論文の検索サービスで探せます。日本語の看護・医学の論文なら、医学中央雑誌刊行会の「医中誌Web」(多くは病院や学校の契約で使う有料のサービス)、国立情報学研究所の「CiNii Research」、科学技術振興機構の「J-STAGE」が代表的で、J-STAGEでは全文を無料で読める論文も多くあります。英語の論文は、米国国立医学図書館の「PubMed」で探せます。探し方が分からないときは、職場の図書室の担当者に聞くと、検索の言葉の選び方を教えてもらえる場合があります。読むときは、まず題名と要旨で、自分の問いに近いかを選び、近いものだけを全文で読みます。
手順3の手続きを確かめるでは、職場のルールを確認します。患者さんの情報を扱う場合は、個人が特定されない形にすることが基本で、職場によっては、倫理の審査や、上司・部署の許可が必要です。人を対象にした研究の進め方は、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が基本になっていて、施設の倫理審査委員会も、この指針に沿って審査します。事例の報告や業務の改善の報告が、審査の対象になるかどうかは施設の決まりで扱いが違うため、始める前に、窓口で確かめます。
手順4の調べてまとめるでは、数える・聞く・比べるなどの方法で、データや事例を整理します。大がかりな調査でなくても、事例を丁寧に振り返る形から始められます。手順5の発表・投稿では、学会や雑誌ごとに、募集の要項や締切があります。要項は、自分で読み、書式や字数の決まりに合わせて、抄録や原稿を整えます。
問いの立て方と、抄録の書き出し
つまずきやすいのは、手順1の問いの立て方です。現場の疑問を、「いつ・どこで・誰に・何が」という形に書き換えると、調べる範囲が決まります。次のメモは、書き換えの例です。
- 疑問:夜勤明けの転倒が多い気がする
- いつ:夜勤明けの何時ごろ
- どこで:病室・廊下・トイレのどれか
- 誰に:年代や自立度の傾向はあるか
- 問い:夜勤明けの転倒は、どの場面で起きているか
「気がする」を、数えられる形にしてみよう。
問いが決まったら、抄録(発表の要約)を書きます。抄録では、背景(なぜ気になったか)、目的(何を明らかにしたいか)、方法(どう調べたか)、結果、考察の順にまとめるのが、よく使われる型です。学会によって書式や字数が違うので、募集の要項で確かめます。
- 背景:なぜ、この疑問を持ったのか。現場で感じたことを、2〜3文で
- 目的:何を明らかにしたいのか。問いを、一文で
- 方法:いつ、誰を対象に、どう調べたのか
- 結果:数えたこと、聞いたこと、事例の経過を、事実だけで
- 考察:結果から言えること、言えないこと、今後の課題
考察では、結果から分かったことだけを書き、広げすぎないことが大切です。「この職場の、この期間の、この対象では」と範囲を示して書くと、誠実な書き方になります。分からなかったことや、調べきれなかったことを、今後の課題として書くのも、発表の大事な部分です。
時間・費用・続け方
論文や発表は、勤務の合間に進めることが多く、時間の確保が、いちばんの壁になりがちです。まとめる作業は、1回で終えようとせず、週に1回、30分だけ、のように区切ると続けやすくなります。人手が足りない職場で時間が取れないときは、人手不足の職場で考えることも読んでみてください。
学会の参加費や交通費、発表の準備の時間を、勤務として扱うかどうかは、職場によって違います。支えがあるかを、先に上司や窓口に聞いておくと、あとで困りにくくなります。
発表の準備では、スライドやポスターの作り方、話す時間の長さ、質問への備えを考えます。時間の決まりは、学会や発表会によって違います。練習は、職場の同僚の前で行うと、分かりにくい所を指摘してもらえます。質問には、分からないことを分からないと答えてよく、「今後の課題として考えます」と受け止める形でも、十分です。
現場で気になっていることを、事例としてまとめて、発表してみたいと考えています。進め方と手続きについて、教えていただけますか。
上司や担当者に、相談するときの例
論文や発表は、申込みや提出に期限があるため、期限から逆算して、段取りを決めておきます。研究をもっと深く学びたい、指導を受けながら進めたいときは、大学院に進むかどうかの考え方にまとめています。目標面談で研究への意欲を伝えるときの文例は、目標設定の文例にあります。
「気がする」を「いつ・どこで・誰に」に直せたら、もう研究の入口に立っているよ。
検索の言葉も、その問いから決まるね。
よくある質問
看護師が論文を書くには、何から始めればよいですか?
現場で気になっていることを、「いつ・どこで・誰に」の形に書き換えて、問いにするところから始めます。そのあと、同じ疑問の論文を数本読み、職場の手続きを確かめます。
学会発表をするには、何が必要ですか?
学会ごとに、募集要項があります。申込みの時期、抄録の書式、字数などが違うため、要項を自分で読んで確かめてください。まず、院内の発表会で練習する人もいます。
研究の経験がなくても、始められますか?
始められます。大がかりな調査でなくても、ひとつの事例を丁寧に振り返る形から、始める人もいます。職場の担当者や上司に、進め方を相談してみてください。
出典・参考(公的な情報)
- 研究に関する指針について(人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針)(厚生労働省)
- J-STAGE(科学技術振興機構)
- CiNii Research(国立情報学研究所)
- 医中誌Web(医学中央雑誌刊行会)
- PubMed(National Library of Medicine)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。