定年後の働き方
看護師の定年は60歳か65歳か。再雇用の条件と年収の見通し
更新 2026年10月23日読むのに約6分
定年が近づくと、「このまま再雇用で残るか、別の働き方にするか」と考えはじめる人がいます。この記事では、定年が何歳の職場が多いか、再雇用で年収がどう変わるかを、統計と法令に沿って整理します。
定年って、仕事の区切りでもあって、気持ちの区切りでもあるよね。
決まりを、年齢の順に見ていこう。
60歳、65歳、70歳。年齢ごとに違う決まり
高年齢者雇用安定法8条は、定年を60歳より低く定めることを、原則として認めていません。そのうえで9条は、定年が65歳未満の事業主に、65歳までの安定した雇用を確保するため、次のどれかを講じるよう求めています。
- 定年を、65歳以上に引き上げる
- 継続雇用制度を導入する(希望する人を、定年後も引き続き雇う制度)
- 定年の定めを廃止する
一般に「再雇用」と呼ばれるのは、2つ目の継続雇用制度です。希望する人が、定年後も引き続き雇われる仕組みで、再雇用後の賃金や時間などの条件は、職場が定めます。
65歳から70歳までは、10条の2により、事業主は、定年の引上げ、65歳以上の継続雇用制度の導入、定年の廃止などで、就業を確保するよう努めることとされています。努力義務であり、義務ではありません。「70歳まで働ける」と決まっているわけではないので、職場の就業規則で確かめます。
選べる方法には、過半数の労働組合などの同意を得た創業支援等措置も含まれます。つまり、同じ「70歳までの就業確保」でも、職場によって、雇われ続ける形と、そうでない形があり得ます。どの方法を採っているかは、就業規則か人事に聞いて確かめます。
定年が60歳か65歳かは、職場ごとの就業規則で決まります。看護師だけの統計ではありませんが、厚生労働省の令和7年「高年齢者雇用状況等報告」(従業員21人以上の企業)では、定年を60歳とする企業が62.2%、65歳が27.2%、61〜64歳が2.9%、66〜69歳が1.2%、70歳以上が2.5%、定年制なしが3.9%でした。65歳以上定年(定年制なしを含む)は34.9%で、前の年より2.3ポイント増えています。いまも60歳定年が多数派で、65歳定年が少しずつ増えている、というのが全体の姿です。
公立病院の看護師(地方公務員)は、定年が段階的に引き上げられています。総務省の資料では、原則の定年は令和5年4月から2年ごとに1歳ずつ上がり、令和7年4月〜令和9年3月は62歳、令和9年4月から63歳、令和13年4月に65歳になります。60歳に達した後の最初の4月1日からは、当分の間、給料月額が7割の水準になります。国立病院機構や民間の病院は公務員の定年制度ではないので、それぞれの就業規則で確かめます。
再雇用の契約書で、まず見る項目
再雇用後の契約が、期間の定めのある契約になる場合は、非常勤・契約社員の違いで見た契約書の読み方が、そのまま使えます。労働条件通知書に、契約期間、更新の基準、所定の時間と日数、賃金の決め方が書かれているかを確かめます。
契約期間の上限は、原則3年ですが、満60歳以上の労働者との契約は、5年まで結べます(労働基準法14条1項)。実際に何年の契約になるかは、職場ごとの定めです。更新を前提にした契約なら、更新の基準の文言が、続けられるかどうかの目安になります。
- 定年を迎える就業規則の定めを確認
- 再雇用の条件を聞く賃金・時間・期間を書面で
- 有期契約で働く契約期間ごとに更新を確認
- 続けるかを選ぶ続ける・変えるを決める
節目ごとに、選び直していいんだよ。
再雇用で、週に働く日数を減らす人もいます。週の所定労働時間が30時間未満で、所定の日数が少ないと、年次有給休暇は日数に応じた比例付与になります。厚生労働省の表では、継続勤務6か月の時点で、週4日なら7日、週3日なら5日です。厚生労働省のモデル就業規則の解説では、有給休暇の継続勤務は実質で判断し、定年後の再雇用のように実質的に続いている場合は通算するとされています。
夜勤を続けるなら、深夜業を含む業務に常時従事する人は、6か月以内ごとの健康診断の対象になります(労働安全衛生規則13条1項3号)。対象は、常時使用される労働者で、所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上などの条件があります。夜勤の回数の記録のつけ方は、夜勤の回数が多いと感じたときの記録と伝え方で扱っています。
一度に聞くことが多いから、紙に書いて持っていくと落ち着けるよ。
無期転換と待遇差。再雇用ならではの注意
厚生労働省の基本方針は、定年後に継続雇用された有期雇用労働者にも、パート・有期雇用労働法が適用されると書いています。事業主は、高年齢者雇用安定法の趣旨も踏まえて労働条件を決め、不合理な待遇の相違の解消に向けて、法の履行を図ることが示されています。「再雇用だから待遇差があっても問題にならない」とは言えません。個別に不合理にあたるかは、事情ごとの判断です。
有期の再雇用でも、同じ使用者との契約が通算5年を超え、本人が申し込めば、期間の定めのない契約に転換できるのが、労働契約法18条の原則です。ただし、有期特別措置法の特例があります。事業主が都道府県労働局長の認定を受けている場合は、定年後に引き続き雇われている期間が、通算の契約期間に入りません(同法8条2項)。認定を受けていない会社には、この特例は当てはまりません。
つまり、再雇用で無期転換できるかは、職場が認定を受けているかで変わります。無期転換の申込権が発生する契約を結ぶときは、申込権が発生する旨と、転換後の労働条件を、明示することになっています(労働基準法15条)。再雇用の契約を結ぶときに、書面で確かめます。
定年後の年収の見通し。統計と自分の数字で出す
令和7年賃金構造基本統計調査で、フルタイムなどで働く看護師(一般労働者)の年齢別の平均を見ると、次のようになります。年額は、きまって支給する現金給与額×12+年間賞与で出した筆者の計算です。
- 55〜59歳:月39万3,000円、賞与101万9,300円。年額 約574万円
- 60〜64歳:月35万9,900円、賞与70万9,900円。年額 約503万円
- 65〜69歳:月30万8,300円、賞与54万900円。年額 約424万円
55〜59歳と60〜64歳の差は年に約70万円で、そのうち賞与の差が約31万円です。この平均は、再雇用の人と、定年前の人や定年が65歳の職場の人を区別していないので、再雇用だけの下がり幅はもっと大きいこともあります。短時間勤務に切り替えた人は、この数字に入っていません。自分の場合は、条件通知書の数字で次の順に出します。
- 条件通知書を見る賃金・時間・日数
- 賞与・手当を聞く有無と条件
- 保険の条件を見る加入するかを確かめる
- 生活費と並べる月の収入と見比べる
自分の数字を並べると、判断の材料になるよ。
再雇用で週の日数を減らすと、社会保険に入り続けるかが変わることがあります。週の所定時間が通常の労働者の4分の3以上なら加入し、それより短いときは週20時間以上・企業規模などの条件で見ます(条件の一覧は看護師のパート)。
賃金が下がったときに使える給付もあります。雇用保険の高年齢雇用継続給付は、60歳から65歳になるまでの人で、60歳時点に比べて賃金が75%未満に下がった状態で働き続ける場合に支給されます。令和7年4月1日以降に60歳になった人などは、各月の賃金の10%が上限です(それより前に基準日を迎えた人は15%)。手続きは、勤め先を通じてハローワークに行うのが一般的なので、人事に申請の有無を聞きます。
老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金に入って働くと、在職老齢年金の調整がかかることがあります。令和8年4月から、年金の基本月額と給与・賞与の月額換算の合計が月65万円(それまでは51万円)を超えると、超えた分の半分が支給停止になります。老齢基礎年金は調整の対象外です。年金額の見方は看護師の年金はいくら?にまとめています。
再雇用以外の選択肢は、60代の求人の探し方、企業で働く看護職で扱っています。50代からの転職は、50代の転職にまとめています。
数字が出せると、漠然とした不安が、少し小さくなるよね。
選ぶ時間は、まだあるよ。ゆっくり考えよう。
よくある質問
定年後は、希望すれば全員が再雇用されますか?
法律は、65歳までの雇用確保のために、定年の引上げ・継続雇用制度・定年の廃止のどれかを求めています。継続雇用制度は、希望する人が定年後も引き続き雇われる仕組みですが、再雇用後の条件は職場ごとに違います。就業規則と条件通知書で確かめてください。
定年後の看護師の年収は、どのくらいですか?
令和7年賃金構造基本統計調査では、フルタイムなどで働く看護師の平均は、60〜64歳で年額約503万円、65〜69歳で約424万円(筆者計算)でした。再雇用の人だけの数字ではないので、自分の条件通知書の賃金と時間から出し直します。
65歳を過ぎても、働き続けられますか?
70歳までの就業確保は、事業主の努力義務です。65歳以降も続けられるかは、職場の制度と契約の更新の基準で決まります。就業規則と契約書で確かめてください。
出典・参考(公的な情報)
- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 第8条・第9条・第10条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果(厚生労働省)
- 地方公務員法の一部を改正する法律について(地方公務員の定年引上げ関係)(総務省)
- 令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(小分類)・年齢階級別 第5表(厚生労働省(e-Stat))
- 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します(厚生労働省)
- 在職老齢年金制度が改正されました(日本年金機構)
- モデル就業規則(令和7年12月版)第23条の解説(厚生労働省)
- 労働基準法 第9条・第14条・第15条・第37条・第38条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法 第8条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働契約法 第18条・第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 無期転換ルールについて(厚生労働省)
- パートタイム・有期雇用労働法のあらまし(2026年10月1日改正省令等施行版)(厚生労働省)
- 社会保険加入の要件(社会保険適用拡大特設サイト)(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
つぎに読む
この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。