妊娠・産休・育休
看護師の不妊治療と仕事の両立。休み方・夜勤・退職を考える前の整理
更新 2026年10月23日読むのに約6分
治療の予定は、勤務表とは別の時間で動くことがあります。この記事では、休み方を軽いほうから並べ、辞める前に確かめることを順に整理します。治療の方針は主治医と決めることなので、ここでは仕事の側だけを扱います。
治療と勤務表を、同時に抱えていると、頭がいっぱいになるよね。
誰にも言えない日があっても、おかしくないよ。
治療の日と、勤務表の日がぶつかるところ
不妊治療の通院は、頻度も日も人によって違い、先の見通しを主治医や医療機関に聞いても、予定が動くことがあります。一方、勤務表は先に決まり、夜勤や人手の少ない日は、代わりを頼みにくくなります。同僚や上司も医療職という職場では、通院の理由を話すかどうかでも、迷いが増えます。
通院の日が動いても、使える休みを何通りか持っておこう。
この記事は、治療を続ける、辞める、働き方を変える、のどれがよいかを決めるものではありません。どの道を選ぶ場合も、先に確かめておくと慌てにくい制度を、順に並べます。妊活全般の誤解は看護師の妊活と仕事に、妊娠が分かったあとは妊娠が分かったときの職場への伝え方に分けて書いています。
休み方を、軽いほうから順に並べる
休み方は、職場に話さずに使えるものから、話して調整するものへ、軽いほうから並べると整理しやすくなります。
- 1. 年次有給休暇:1日単位のほか、時間単位は労使協定があれば年5日以内(労働基準法39条4項)。半日単位は、法律上の義務ではなく、就業規則などの定めがあれば認められる(厚生労働省の説明)
- 2. 会社独自の制度:不妊治療のための休暇など、勤め先に独自の制度があるか。就業規則と人事で確かめる
- 3. 勤務時間の調整:時差出勤、フレックスタイム制、短時間勤務、テレワークなどが、会社にあれば
- 4. 勤務表の希望:夜勤の入り方や、休みの希望の出し方(締め切りと、希望を出す決まり)
- 5. 働き方の変更:日勤のみ、時短、非常勤など。収入と保険が変わるため、辞める前の確認と同じ項目を見る
年次有給休暇は、雇入れから6か月続けて働き、全労働日の8割以上出勤すると、まず10日が与えられます(労働基準法39条)。自分の残りの日数は、勤め先の窓口で聞きます。時間単位や半日の年休は、通院の時間だけ抜ける使い方に向きますが、使えるかどうかは、就業規則の定め次第です。
同じページには、不妊治療連絡カードの様式(Word・PDF)と記載例も載っています。治療中であることを勤め先に伝えるときや、会社独自の制度を使うときのツールで、出すかどうかも本人が決めます。
治療の費用の見通しも、休み方と同じくらい大事です。こども家庭庁の「不妊のこと DICTIONARY」では、2022年4月から一般不妊治療と生殖補助医療が保険適用になり、自己負担は基本的に3割で、高額療養費制度も使えると説明しています。生殖補助医療は、治療開始日の女性の年齢が43歳未満で、回数は、40歳未満なら1子ごとに6回まで、40歳以上43歳未満なら1子ごとに3回までです。働き方を変えて収入が減ると、高額療養費の上限額も変わることがあるので、加入先の保険者に確かめます。
制度の名前が並ぶと疲れるね。自分の職場にありそうなものだけ、印をつけよう。
夜勤の調整は、法律の請求と、職場の仕組みに分ける
夜勤を制限できる法律上の請求は、労働基準法66条3項の、妊産婦による深夜業の請求です。「妊産婦」は、妊娠中の女性と、産後1年を経過しない女性(64条の3)なので、治療の段階では、この請求の対象に入りません。妊娠が分かったあとは、請求することで、深夜業をさせてはならない扱いになります(自動ではなく、請求が要ります)。妊婦健診などの時間の確保も、申請できるのは原則として妊娠が確定された後と、厚生労働省のパンフレットにあります。
治療中の夜勤は、勤務表の希望の出し方、会社独自の制度、就業規則の定めで調整することになります。何が使えるかは職場によって違います。希望を伝えるときは、「夜勤を減らしたい」だけより、「夜勤が続けて入るのを避けたい」「夜勤明けの日を通院の日にしたい」のように、場面を言葉にすると、相手が考えやすくなります。数字で伝える方法は、夜勤の回数を数字で伝える方法にあります。
日勤のみへの変更や、時短、非常勤への切り替えは、収入と保険が変わります。給与の違いは、日勤のみの働き方と、勤め先の条件の書面で確かめます。
辞めると決める前に、確かめておく順番
辞めるかどうかは、治療の見通し、収入、職場の状況をあわせて決めることです。ここでは、辞めると決めたときに、先に確かめておくと慌てにくい点を並べます。辞めるべきとも、続けるべきとも書きません。
まず、退職の申し出です。民法627条1項では、期間を定めない雇用は、申入れから2週間で終わります。就業規則に「1か月前まで」などの定めがある職場もあり、どちらを優先するかは見解が分かれます。退職の申し出の期限の考え方で、両方の見方を確かめられます。
次に、健康保険です。治療を続けるなら、加入する保険を途切れさせないことが先になります。退職後の選び方は、協会けんぽの任意継続(退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あることが条件で、退職日の翌日から20日以内に申出)、市区町村の国民健康保険(資格を取得してから14日以内に窓口へ)、家族の健康保険の被扶養者の3つです。どれが安いかは、世帯や前年の所得で変わります。期限つきの手続きの一覧は、退職後の保険・年金・失業保険の手続きにあります。
雇用保険の基本手当は、就職の意思と能力があるのに就職できない状態であることが条件です。受給期間は原則、離職の翌日から1年間で、病気・けが・妊娠・出産・育児などで30日以上働けないときは、延長できる(最長3年)と案内されています。治療のために働けない期間が長くなる場合に、これに当たるかどうかは、個別の事情で、ハローワークが判断します。基本手当の手続きの流れは、看護師の失業保険の手続きにあります。
治療の先に妊娠・出産がある場合は、出産に関する給付と退職の関係も、頭に置いておきます。協会けんぽの説明では、退職後も出産手当金を受けられるのは、資格喪失日の前日までに、任意継続の期間を除く被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に出産手当金を受けている、または受けられる状態にある場合です。出産育児一時金は、1年以上被保険者だった人が、資格喪失後6か月以内に出産したときに、受けられる扱いがあります(健康保険法106条)。加入先(協会けんぽ・健保組合・共済)で扱いが違うことがあるため、辞める日を決める前に、加入先に確かめます。
決める前に、聞ける窓口が何か所かあるよ。ひとりで決めなくていいからね。
話すか、話さないか。記録ノートと、相談の窓口
治療のことを職場に話すかどうかは、本人が決めることです。話さずに、年次有給休暇のように、会社の制度として使えるものから始める方法もあります。話す場合も、すべてを説明する必要はなく、必要な配慮に絞って伝えられます。
治療のため、通院が何度か必要になる見込みです。詳しい内容は控えますが、勤務表の希望の出し方について、相談させてください。
上司に、必要な配慮だけを伝える例
どの道を選ぶ場合も、記録が役に立ちます。通院の日と、その日の勤務、使った休み、職場の誰にいつ何を伝えたかを、短く残しておくと、休みの残りを数えるときも、あとで職場と話すときも、事実を確かめやすくなります。気持ちとあわせて、現在地ログにも書き留められます。
- 通院の日と時間帯
- その日の勤務(日勤・夜勤・休み)
- 使った休み(年休の時間・半日・1日)
- 職場の誰に、何を伝えたか
- その日の気持ちを一言
全部書けない日は、日付だけでも残そう。
厚生労働省の指針には、妊娠、出産等(不妊治療を含む)に関する否定的な言動が、ハラスメントの原因や背景になりうることを、事業主が明確にして周知する項目があります。事業主には、相談を受けて対応する体制を整える義務があります。言われたことが重なってつらいときは、日付と内容を書き残して、相談します。
妊娠・出産等に関する言動のハラスメントの相談先は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)と、総合労働相談コーナーです(土日祝日・年末年始を除く平日、無料、予約は不要)。気持ちの負担が大きいときは、働く人向けの「こころの耳」や、つらいときの窓口にも話せます。窓口ごとの違いは労働相談の窓口の選び方で説明しています。
続けるにも、休むにも、今日は選ばなくていいよ。休み方の候補を一つ、ノートに書いておこうね。
よくある質問
不妊治療のための休暇は、法律で決まっていますか?
厚生労働省のページには、企業に不妊治療のための休暇を法律で義務づける旨の記載はありません。年次有給休暇、会社独自の制度、時差出勤などの調整から、確かめます。
治療のことを話さないと、休めませんか?
話すかどうかは、本人が決めます。年次有給休暇のように、会社の制度として使えるものから始める方法があります。時間単位や半日単位で取れるかは、就業規則で確かめます。
治療中に、夜勤を外してもらう法律上の決まりはありますか?
労働基準法66条3項の深夜業の請求は、妊産婦(妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性)が対象で、治療の段階は対象に入りません。勤務表の希望や会社の制度で調整できるかを、職場で確かめます。
出典・参考(公的な情報)
- 労働基準法 第19条・第22条・第39条・第64条の3・第65条・第66条・第89条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第627条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不妊治療と仕事との両立のために(厚生労働省)
- 不妊のこと DICTIONARY 保険適用について(こども家庭庁)
- 働く女性の母性健康管理のために(令和8年1月)(都道府県労働局(厚生労働省))
- 年次有給休暇(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
- 健康保険法 第99条・第102条・第104条・第106条・第159条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 出産手当金(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 出産育児一時金(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 任意継続(給付と手続き)(全国健康保険協会(協会けんぽ))
- 国民健康保険の加入・脱退について(厚生労働省)
- 基本手当について(ハローワークインターネットサービス(厚生労働省))
- 育児・介護休業法のあらまし(令和7年4月1日、10月1日施行対応)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
- 働く人の「こころの耳電話相談」(こころの耳(厚生労働省))
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。