Q&A・患者さんとの関係
看護師と患者さんの連絡先・恋愛。倫理綱領から考える線引きと窓口
更新 2026年10月23日読むのに約7分
連絡先を聞かれたり、気持ちが傾いたりしたとき、法律なのか、倫理なのか、職場の決まりなのかが分からず、固まってしまうことがあります。この記事では、法律と倫理綱領で確かめられることと、勤め先で確かめることを分けて整理します。
えっ、と固まる場面って、不意に来るよね。
その場で答えが出なくても、責めなくていいんだよ。
Q. 連絡先を聞かれたら、教えてよいのですか?
個人の連絡先を教えるかどうかは、法律ではなく、倫理と勤め先の決まりで考える問題です。手がかりになるのは、日本看護協会の「看護職の倫理綱領」です。本文3で、対象となる人々との間に信頼関係を築き、その信頼関係に基づいて看護を提供する、と述べています。
本文3の解説は、自分が行う看護が専門職としての支援であることを自覚し、支援としての関係を越えて、個人的な関係に発展するような行動はとらない、としています。連絡先の交換は、その線を考えるときの一つの場面になります。
倫理綱領は、公益社団法人である日本看護協会がまとめた専門職の行動指針で、法律ではありません。前文には、専門職として引き受ける責任の範囲を、社会に示すものと書かれています。「禁止されている」というより、専門職としての立場から、どう考えるかを示したもの、という位置づけです。
その場で決めなくていいよ。決まりを見てから答えよう。
実際の対応は、勤め先の規定で決まっていることが多いです。個人の携帯番号やSNSのアカウントを患者さんに伝えてよいか、病棟の電話番号を案内するのかといった扱いは、職場ごとに違います。聞かれたときは、その場で答えを出さず、規定を確かめます。
ありがとうございます。職員の個人の連絡先は、お伝えしないことにしています。ご用のときは、病棟のお電話にご連絡ください。
勤め先の決まりを確認したうえでの断り方の例
断るときは、相手を責めず、短く、同じ言い方を繰り返します。何度も聞かれる、気持ちを伝えられて困る、といった場合は、一人で抱えず、リーダーや師長に報告します。その患者さんの担当を、複数人にしてもらえるかを相談することもできます。
好意を向けられて困るのが、患者さんからの言動の場合は、看護師のセクハラの記事にも、相談先がまとめてあります。恋愛とは別の話として、困りごとの側から整理できます。
Q. 患者さんとの恋愛は、法律で禁止されていますか?
看護師の資格と仕事を定める保健師助産師看護師法(2026年10月時点の現行条文)には、患者さんとの交際や連絡先の交換を、直接禁じる条文はありません。法律が看護師に求めているのは、たとえば42条の2の守秘義務です。正当な理由なく、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならず、看護師でなくなった後も同じです。
ただし、条文がないことは、何をしても問題にならないという意味ではありません。同じ法律の14条は、看護師としての品位を損するような行為があったとき、厚生労働大臣が戒告・業務停止・免許の取消しの処分をできると定めています。どんな行為が当たるかは個別の事情で判断されるので、この記事では決められません。立場を使って相手に近づいた、と受け取られる行動は避けるのが安全です。
職場の就業規則や服務規程に、患者さんとの私的な関わりについての定めを置いている勤め先もあります。法律よりも先に、ここが実際の線引きになります。採用時の書類や院内の規程集で、一度確かめておきます。
守秘義務は、恋愛の話とは別に、連絡先を交換する場面にも関わってきます。たとえば、病棟や診療の話題を個人のメッセージでやり取りすると、業務上知り得た情報が、外に出る入り口になります。
| 項目 | 法令・倫理綱領で確かめられたこと | 勤め先で確かめること |
|---|---|---|
| 守秘義務 | 業務上知り得た秘密を、正当な理由なく漏らさない。看護師でなくなった後も続く(保助看法42条の2) | 個人情報の取扱いの決まり |
| 交際を禁じる条文 | 保助看法には、患者さんとの交際を直接禁じる条文はない。品位を損する行為は処分の対象になりうる(14条) | 就業規則・服務規程の定め |
| 個人的な関係 | 倫理綱領は、支援上の関係を越えた個人的関係に発展するような行動はとらない、としている(本文3の解説) | 連絡先・面会の規定 |
| 立場の利用 | 倫理綱領は、立場を利用して看護職の信頼を損なうような行為はしない、としている(本文13の解説) | 担当の調整の相談先 |
| SNS | 業務上の利用と私的な利用を区別し、細心の注意を払う(本文5の解説) | 勤め先のSNSの決まり |
2026年10月時点の現行条文と、2021年版の倫理綱領で確かめた範囲です。
法律と倫理と職場の決まり、3つは別物なんだね。
Q. 退院後や、元患者さんならよいのですか?
倫理綱領を本文1から16まで、解説も含めて通して読むと、退院後や元患者さんとの関係を名指しで扱った記述はありません。決め手になるのは、本文3の解説にある「支援上の関係を越えた個人的関係に発展するような行動はとらない」という考え方を、いまの関係に当てはめたときにどうなるか、です。退院した日を境に、自動的に線が消えるわけではありません。
当てはめるときは、次の4つを順に見ます。1つでも「はい」があるなら、支援上の関係がまだ続いているか、その影響が残っている状態と考えられます。その段階で個人的なやり取りを始めるのは避け、先に師長や看護部に相談します。
- 支援上の関係が続いていないか(外来に通院している、訪問看護で関わっている、再入院の可能性があるなど)
- 自分が、その人の病歴や家族の事情など、業務上知り得た情報を持っているか
- 相手が、看護を受けていた関係のなかで、断りにくい立場になっていないか
- 同僚や師長に話したとき、隠さずに説明できるか
たとえば、退院した人と外来の待合で再会し、食事に誘われた場面を考えます。その人が自分の病棟の外来に通院中なら、1つ目に当てはまります。入院中の話を相手が持ち出してくるなら、2つ目にも当てはまります。この場合は、「通院中の方とは、個人的にお会いしないことにしています」と短く断り、その日のうちにリーダーに報告します。
判断を一人ですると、気持ちに引っ張られやすくなります。相談するときは、「してよいかどうか」を聞く前に、事実を先に話します。誰から、どんな場面で、何を言われたか、自分はどう返したか。この順に話すと、相談された側も、規定の確認なのか、担当の調整なのか、見分けやすくなります。気持ちの部分は、聞かれたときに話せば足ります。
4つの問いに、1つでも「はい」があったら、まず相談だよ。
Q. SNSの友だち申請が来たら、どうすればよいですか?
倫理綱領の本文5は、対象となる人々の秘密を保持し、取得した個人情報を適正に取り扱うことを求めています。解説は、ソーシャルメディアについて、業務上の利用と私的な利用を区別し、対象となる人々と看護職自身のプライバシーを守るために、細心の注意を払うよう述べています。
申請を承認してよいかは、倫理綱領から直接は決められません。ただ、承認して個人的なやり取りが始まると、守秘義務や、支援上の関係の話に近づきます。承認する前に、勤め先のSNSの決まりを確かめ、迷うなら師長や上司に報告します。
自分の投稿にも注意が要ります。勤務先、勤務時間、病棟の様子、患者さんの特徴が読み取れる投稿は、本人が気づかないうちに、特定につながることがあります。業務のことは書かない、と決めておくのも一つの方法です。
困ったときの動き方:断る、報告する、記録する
連絡先を聞かれた、好意を伝えられた、メッセージが続く。そうした場面では、次の順で動けます。
- 1. その場は、短く断る
- 2. 同じ日のうちに、リーダーか師長に報告する
- 3. 日付、場面、言われたことを、事実だけ記録する
- 4. 担当の調整が必要かを、師長に相談する
報告・記録・窓口の動き方は、患者さんのクレームで落ち込んだときに詳しくあります。しんどさが続くときは、つらいときの窓口にも話せます。気持ちが傾いて、どうしたらよいか分からないときも、報告や相談ができます。
断る一言と報告する相手、今日のうちにメモしておこう。
よくある質問
患者さんから個人的な連絡先を聞かれたら、教えてもよいですか?
日本看護協会の倫理綱領は、支援を越えて個人的な関係に発展する行動はとらない、としています。その場で答えず、勤め先の規定を確かめ、迷うときは師長に相談してください。
患者さんとの交際は、法律違反になりますか?
保健師助産師看護師法には、患者さんとの交際を直接禁じる条文はありません。ただし、守秘義務(42条の2)は交際の有無に関係なく続き、品位を損する行為は処分の対象になりえます(14条)。就業規則で定めている勤め先もあるので、規程を確かめてください。
患者さんからSNSの友だち申請が来たら?
倫理綱領の解説は、業務上と私的なSNS利用を区別し、細心の注意を払うよう述べています。承認する前に、勤め先のSNSの決まりを確かめ、迷うなら師長や上司に報告します。
出典・参考(公的な情報)
- 看護職の倫理綱領(本文3・本文5・本文13とその解説)(公益社団法人 日本看護協会)
- 保健師助産師看護師法 第14条・第42条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。