ハラスメントと相談窓口
看護師のモラハラとは?パワハラ・カスハラとの違いと種類の見分け方
更新 2026年10月23日読むのに約8分
つらい言動を受けても、何と呼べばいいのか分からないまま、ひとりで抱えてしまう人は少なくありません。この記事では、モラハラという言葉の意味から始めて、制度で使われる種類ごとの言葉に当てはめ、窓口で状況を伝えるときの言い方まで、まとめます。
言葉が見つかると、モヤモヤの輪郭が、少しはっきりするんだよ。
どの言葉が近いか、順番に見ていこうね。
看護師のモラハラとは:法律の言葉ではないが、中身は整理できる
「モラハラ」(モラルハラスメント)は、法律に出てくる言葉ではありません。一般には、暴力ではなく、言葉や態度によって、相手の人格や尊厳を継続的に傷つける精神的な嫌がらせを指して使われます。一度きりの強い言い方より、小さな否定や無視が、くり返し続く形を指すことが多い言葉です。
法律の言葉ではないため、「モラハラです」と言うだけでは、職場の対応につながりにくいことがあります。そこで、受けている言動を、制度の言葉であるパワーハラスメントの型に当てはめ直すと、窓口で話が通りやすくなります。看護の現場で、モラハラと感じやすい場面を、型に並べると次のようになります。
| 現場で起きやすい場面 | 近いパワハラの型 |
|---|---|
| 人前でため息をつかれる、報告のたびに笑われる | 精神的な攻撃 |
| 「だから新人は」「あなたには無理」と決めつけられる | 精神的な攻撃 |
| 挨拶や報告を無視され、申し送りの輪に入れてもらえない | 人間関係からの切り離し |
| 休みの日の過ごし方や家族のことを、しつこく聞かれる・言いふらされる | 個の侵害 |
| 必要な情報を回してもらえず、仕事を任されない | 過小な要求・切り離し |
当てはめは目安です。パワハラに当たるかは、3つの要素と頻度・継続性などから個別に判断されます。
近い型が見つかったら、窓口で話すときの言葉にできるよ。
表のどれかに近い場面が、くり返されているなら、モラハラという呼び方のままでも、相談する理由になります。大事なのは、言葉の正しさより、「何が、いつから、どのくらい続いているか」を書き出しておくことです。
パワハラの3つの要素と、指針の6つの型
パワーハラスメントは、厚生労働省の指針で、次の3つをすべて満たすものとされています。職場で行われる優越的な関係を背景とした言動であること、業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、労働者の就業環境が害されること、です。客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指導は、パワハラに当たらないとも書かれています。
優越的な関係は、上司だけとは限りません。指針は、業務に必要な知識や経験を持つ同僚や部下からの言動で、協力を得ないと仕事が回らないもの、同僚や部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶が難しいものも、例に挙げています。判断には、言動の目的、経緯、態様、頻度、継続性などが総合的に考慮されます。
指針は、代表的な言動を、次の6つの型に分けています。2026年10月1日に適用された改正後の指針でも、6つの型の構成は同じです。
- 身体的な攻撃:殴る、蹴る、物を投げつける、など
- 精神的な攻撃:人格を否定する言動、必要以上に長時間の厳しい叱責を繰り返す、など
- 人間関係からの切り離し:隔離、仲間外し、集団で無視して孤立させる、など
- 過大な要求:業務上明らかに不要なことや、遂行不可能なことを強いる、など
- 過小な要求:能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない、など
- 個の侵害:私的なことに過度に立ち入る、病歴などの機微な個人情報を、了解なしに暴露する、など
法律の言葉が並ぶと、それだけで頭が重くなるよね。
暗記はいらないから、肩の力を抜いて、次へ進もう。
セクハラ・マタハラ・カスハラは、誰の言動かで枠が変わる
セクシュアルハラスメントの指針は、性的な言動への対応で労働条件の不利益を受ける「対価型」と、性的な言動で就業環境が害される「環境型」を挙げています。同性に対するものも含まれます。言動を行う人には、上司や同僚だけでなく、患者やその家族もなりうると明記されています。患者さんからの性的な言動への対応はセクハラの記事で扱います。
妊娠・出産に関するハラスメント(マタハラ)の指針は、制度等の利用への嫌がらせと、状態への嫌がらせの2つの型を挙げています。業務分担や安全への配慮など、業務上の必要性に基づく言動は該当しないとされる一方、上司や同僚が、繰り返し・継続して嫌がらせになる言い方をすることは、該当しうるとされています。くわしくは看護師のマタハラとは何かにまとめています。
カスタマーハラスメントの指針は、顧客等に、病院を含む施設の利用者とその家族を含めています。典型例には、人格を否定する言動、大声での威圧、執拗な言動、長時間の居座り、性的な要求などが挙がっています。一方で、苦情のすべてがカスハラに当たるわけではなく、社会通念上許容される範囲の申し入れは正当なものとされています。その場の受け答えは患者さんのクレームを受けたとき、組織の対応はカスハラの定義と病院の対応で扱います。
法律の早見表と、「いじめ」という呼び方
職場のハラスメントは、一つの法律でまとめて決められているわけではありません。種類ごとに根拠の法律があり、病院や施設の運営側(事業主)に、相談窓口を設けるなどの措置が義務づけられています。
- パワーハラスメント:労働施策総合推進法(2026年10月施行版で第31条)
- セクシュアルハラスメント:男女雇用機会均等法(同第11条)
- 妊娠・出産等に関するハラスメント:男女雇用機会均等法(同第15条)
- 育児休業・介護休業等に関するハラスメント:育児・介護休業法(同第25条)
- カスタマーハラスメント:労働施策総合推進法(同第33条)。2026年10月1日から義務
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント:男女雇用機会均等法(同第13条)。2026年10月1日から義務。看護実習を受ける学生も対象に入る
カスハラと求職者等へのセクハラの対策は、2025年6月に成立した改正法(令和7年法律第63号)で義務になり、2026年10月1日に施行されています。義務を負うのは事業主で、職場の体制が整う早さは職場ごとに違います。
「いじめ」も、法律用語ではありません。厚生労働省は、いじめ・嫌がらせという言葉をパワハラの相談の文脈で使いますが、判断の基準はパワハラの3つの要素です。陰口を聞かされる場面は陰口に巻き込まれないための返し方に、無視が続くときの記録は挨拶を無視されるときにまとめています。
言葉を当てはめたあと、窓口でどう伝えるか
相談の順番は、まず社内(会社の相談担当者や信頼できる上司)、難しければ社外(都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナー)です。窓口ごとの使い方と記録の残し方は、看護師のパワハラ相談の手順にまとめています。
- 事実を書く日付つき
- 言葉を当てる近い型を探す
- 窓口を選ぶ社内・社外
- 状況を伝える短く・順番に
分類は、あくまで準備。迷ったら、そのまま話そう。
モラハラという言葉が合うか分からないのですが、〇月ごろから、同じ人から、人前でため息をつかれたり、「だから新人は」と言われたりすることが続いています。日付をつけたメモがあります。
窓口で、状況を伝えるときの最初の一言の例
気持ちの負担が大きいときは、つらいときの窓口に話せる先がまとまっています。
言葉を調べるだけでも、前に進んでいるよ。話したくなったら、窓口はあるからね。
今日はここまでで十分。ゆっくり休んでね。
よくある質問
看護師のモラハラとは、どんなことですか?
法律の言葉ではありませんが、一般には、言葉や態度で相手の人格を継続的に傷つける精神的な嫌がらせを指します。人前でのため息や嘲笑、決めつけ、無視、私生活への口出しなどが、くり返される形です。相談するときは、パワハラの型(精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・個の侵害など)に当てはめると伝わりやすくなります。
モラハラとパワハラは、何が違いますか?
パワハラは法律と指針で定義された言葉で、優越的な関係・業務上の必要を超える・就業環境が害される、の3つをすべて満たすものです。モラハラは法律の言葉ではなく、精神的な嫌がらせを広く指す呼び方です。モラハラと感じる言動の多くは、パワハラの「精神的な攻撃」などに近い形です。
患者さんからの言葉や行為も、ハラスメントになりますか?
セクハラの指針は、患者やその家族も言動を行う者になりうると書き、カスハラの指針は、施設の利用者とその家族を含めています。どの枠組みになるかは状況で変わるため、窓口で聞いてください。
出典・参考(公的な情報)
- 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)(厚生労働省)
- 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年10月1日適用)(厚生労働省)
- 事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年10月1日適用)(厚生労働省)
- 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(厚生労働省)
- リーフレット(詳細版)カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。