手当・賞与・退職金
看護師の昇給の仕組み。いくらかより先に、見えにくい条件を確かめる
更新 2026年10月23日読むのに約6分
昇給は、「あるか、ないか」だけで語られがちです。何が昇給にあたるのかと、どの条件で決まるのかを分けると、見えない部分が絞れます。
昇給って言葉、ベースアップや手当の改定まで、ごちゃっと混ざって使われやすいよね。
昇給、ベースアップ、手当の改定は、別々の動き
厚生労働省の令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査では、賃金の改定に、定期昇給(定昇)、ベースアップ(賃金表の改定)、諸手当の改定などが含まれる、と整理されています。給料が動いたとき、どの動きなのかによって、「来年も同じように上がるか」の見通しが違ってきます。
同じ調査で、定期昇給の制度が「ある」企業は、全産業で84.2%、医療,福祉で83.8%(制度なしは16.1%)でした。制度の内容(複数回答)は、自動昇給が医療,福祉で37.7%、業績評価などその他が65.9%です。この調査は表の最小の企業規模区分が100〜299人で、小さな職場の様子までは分かりません。
1人平均賃金の改定額も公表されていて、令和8年の医療,福祉は8,540円(3.3%)でした。ただし、これは定期昇給とベースアップ等を合わせた全職種の平均で、看護師の昇給額ではありません。看護師だけの昇給額を集計した公的な統計はないので、「看護師の昇給は年にいくら」と額が断定されているときは、出どころを確かめてから読みます。
「経験10年でいくら上がる」と読めない理由
令和7年賃金構造基本統計調査(民営10人以上、一般労働者の看護師、男女計)で、所定内給与額を経験年数別に見ると、0年が27万8,200円、1〜4年が30万4,700円、5〜9年が31万4,800円、10〜14年が32万6,500円、15年以上が35万8,600円でした。経験を重ねるほど高くなる傾向は読めますが、1〜14年の間の増え方は小さめです。
ただし、この数字は、経験年数の違う別々の人たちの平均の差です。同じ人が毎年いくら上がったかという記録ではありません。年齢、役職、勤め先の規模、夜勤の回数などの構成も、階級ごとに違います。「経験10年で月に〇万円上がる」とは、読めません。
- 規程を読む昇給の条文・賃金表
- 明細を見る基本給の欄
- 面談で聞く評価と次の条件
- メモを残す日付と数字
年に1回、数字を書くだけで、変化が見えてくるよ。
ベアなのか、定昇なのか。分けて書いておくと、あとで助かるよ。
「自動」か「評価」かも、ひと言添えておこうか。
見えにくい条件を、4つの問いで探す
日本看護協会の2024年度賃金調査(病院調査、回収3,471件、回収率43.0%)では、年齢や勤続年数に基づく昇給が「ある」病院が75.0%でした(公立90.5%、国立81.2%、医療法人68.9%)。非管理職の人事評価に基づく昇給が「ある」病院は43.4%で、国立66.9%、公立50.5%、医療法人42.4%、500床以上59.6%と分かれます。二つは重なることもあり、どちらか一方とは限りません。
賃金表がある病院は75.0%で、そのうち公開しているのは54.0%でした。医療法人では、賃金表があるのが63.5%、そのうち公開は26.1%です。個人調査(会員の回答)では、「定期的な昇給がある」と答えた病院勤務者が64.6%、訪問看護ステーション勤務者が49.6%で、定期昇給の額に「満足していない」と答えた人は、病院勤務者で50.7%、訪問看護ステーション勤務者で41.2%でした。いずれも回答した病院・会員の集計で、全国の代表値ではありません。
訪問看護ステーションの調査(回収1,377件、回収率34.4%)では、賃金表が「ある」事業所が57.2%で、公開しているのは45.6%でした。基本給を決める基準(複数回答)は、「職務」が58.0%、「年功」が53.8%、「能力」が42.1%です。病院と同じく、何で基本給が決まるかは事業所で分かれるので、「年数を重ねれば上がる」とは決めつけず、基準の欄を確かめます。
数字から分かるのは、昇給の決め方が職場で大きく違うことです。自分の職場の条件は、次の4つの問いで探せます。
- 自動か、評価か(年齢・勤続で上がる部分と、評価で上がる部分があるか)
- 賃金表はあるか(自分の等級・号・額を、見せてもらえるか)
- 時期と対象は(年に1回か、何月か、休職や育児休業から戻った年はどうなるか)
- 上限はあるか(等級が上がらないと、頭打ちになる段階があるか)
賃金表の見え方の例として、国家公務員の医療職俸給表(三)(令和8年4月1日現在)があります。級と号俸で月額が決まり、1級は1号俸が22万1,700円、11号俸が23万9,700円です。昇給は毎年1月1日で、勤務成績に応じた5段階の昇給区分(A〜E)ごとに、上がる号俸の数が決まります(人事院規則9-8)。評価で上がり方が変わる仕組みが、規則に書かれている例です。民間や自治体の病院は、それぞれの賃金表と条例・規程で決まります。
昇給が見当たらないとき、聞き方と窓口
労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使う職場の就業規則に、昇給に関する事項を書くよう定めています。昇給の定めが就業規則に見当たらない、条件が書いていない、というときは、まず規程の写しを探し、書いてあるかどうかを確かめます。10人未満の職場は、この作成義務の対象外です。
昇給がないことが法律に反するかどうかは、個別の事情で変わるため、このページでは判断しません。規程や契約書を持って、総合労働相談コーナーで相談できます。昇給の額を同年代の平均と比べたいときは、看護師の月収の内訳と平均の見方で、調査ごとの定義の違いを確かめてから、数字を並べます。
昇給が、自動なのか評価によるのか、賃金表のどこに当たるのかを、教えてもらえますか。
面談で聞くときの一言の例
引かれる前の額が動いても、手元に残る額は保険料や税で変わります。動いた幅の見方は、看護師の手取りの見方で整理しています。給料の水準そのものを比べたいときは、看護師の給料が安いと感じたときに分けて扱います。
自動の部分と評価の部分、2つに分けて書けたら、来年と比べられるね。
よくある質問
看護師の昇給は、年にいくらですか?
看護師だけの昇給額の公的な統計はありません。厚生労働省の調査にある医療,福祉の賃金改定額(令和8年に8,540円・3.3%)は、定期昇給やベースアップ等を合わせた全職種の平均です。自分の額は、賃金表と明細で確かめます。
昇給が毎年ない職場は、おかしいのですか?
このページでは、善しあしを判断しません。厚生労働省の調査では、医療,福祉で定期昇給の制度がある企業が83.8%、ない企業が16.1%でした。就業規則に昇給の定めがあるか、評価で決まるのかを確かめ、迷うときは総合労働相談コーナーに規程を持って相談します。
転職すると、昇給の条件も変わりますか?
変わることがあります。日本看護協会の調査では、賃金表がある病院は75.0%で、医療法人は63.5%と、設置主体で違いが出ています。応募先の条件は、昇給の時期、賃金表の有無、評価の基準を、面接や条件通知書で確かめます。
出典・参考(公的な情報)
- 労働基準法 第11条・第24条・第37条・第89条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況(厚生労働省)
- 令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(厚生労働省)
- 令和7年賃金構造基本統計調査 第14表 性・経験年数階級別(e-Stat)(厚生労働省)
- 2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書(公益社団法人 日本看護協会)
- 俸給表(令和8年4月1日現在)(人事院)
- 人事院規則九―八(初任給、昇格、昇給等の基準)第34条・第37条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。