夜勤の免除・減らし方
看護師の夜勤の免除が認められる場合。法律で請求できる範囲と手続き
更新 2026年10月23日読むのに約5分
夜勤を外してほしいと思っても、どこまでが権利で、どこからがお願いなのか、分かりにくいものです。この記事では、法律に請求の定めがある場面と、定めがない場面を分けて、進め方の順番を整理します。
夜勤を外したいって切り出すの、けっこう勇気がいるよね。
頼れる仕組みが、どこにあるのか。先に位置を確かめておこう。
「夜勤免除」は、請求できるものと、話し合うものに分かれる
「夜勤を免除してもらう」と言うとき、実際には、性質の違う3つのことが混ざっています。1つ目は、法律が「請求があれば制限する」と定めている仕組み。2つ目は、職場が配慮として認める運用。3つ目は、雇用契約や勤務形態そのものを話し合って変える方法です。
法律に定めがある仕組みは、条文が「請求した場合には、深夜業をさせてはならない」という形です。妊娠した、子どもがいる、という事情だけでは自動的に夜勤が外れず、本人の請求が入口になります。仕組みによっては、事業の正常な運営を妨げる場合などの例外もあります。
この記事で扱うのは、1つ目の、法律に請求の定めがある場面です。2つ目と3つ目の、話し合いの進め方は、夜勤を減らしたいときの進め方に譲ります。子育てと勤務の組み立て全体は、子育てと看護師の仕事の両立にまとめました。
- 妊娠中・産後1年を経過しない間:労働基準法66条3項の請求と、母性健康管理の措置
- 小学校就学前の子を養育している間:育児・介護休業法19条の請求
- 要介護状態の家族を介護している間:同じ仕組みが準用される(20条)
- 健康上の理由で医師の意見が出されたとき:労働安全衛生法に基づく、事業者の措置
- 上のどれにも当たらないとき:法律上の請求の形はないため、契約・就業規則・話し合いで進める
妊娠中・産後1年:66条3項の請求と、母健連絡カードの措置
妊産婦とは、妊娠中の女性と、産後1年を経過しない女性のことです(労働基準法64条の3)。妊産婦が請求した場合、深夜業をさせてはならないと、66条3項に定められています。時間外労働と休日労働も、66条2項で、請求により制限されます。
産後8週間は、そもそも就業させられない産後休業の期間です(65条2項。産後6週間を過ぎて本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務は別)。夜勤の請求が問題になるのは、復帰してから、出産の翌日から1年を経過するまでの間です。妊娠中は、ほかの軽易な業務への転換も請求できます(65条3項)。夜勤を外す請求とは別なので、必要なら両方を伝えます。
もう1つの道が、男女雇用機会均等法の母性健康管理の規定です。妊娠中・産後の女性が、医師や助産師から勤務について指導を受けたとき、事業主は、その指導事項を守れるように、勤務時間の変更や勤務の軽減などの措置を講じなければなりません(厚生労働省のパンフレットの説明)。
医師の指導を会社に正確に伝える様式が、母健連絡カードです。標準的な措置の欄には、休業(入院加療・自宅療養)、勤務時間の短縮、身体的負担の大きい作業の制限が並び、長時間の立作業や、ストレスや緊張を多く感じる作業なども例に挙がっています。「夜勤の免除」という項目そのものは、標準の欄にありません。カードで夜勤をどう扱えるかは、主治医に、夜勤があること・勤務表の形を伝えて相談します。
労働基準法66条3項の請求
妊産婦本人が、深夜業をしないことを請求する形です。期間は、妊娠中から、産後1年を経過するまで。医師の指導が前提の仕組みではありません。
母性健康管理の措置
医師や助産師の指導事項を、会社が守れるようにする義務です。夜勤が指導事項に当たるかは、主治医の判断と、カードの書き方次第です。
カードの提示がなくても、指導事項があった旨を申し出れば、事業主は適切な措置をとる必要がある、とパンフレットは説明しています(Q&A問8)。母子健康手帳そのものを見せるよう求めることは、好ましくないともされています。
夜勤以外の業務の配慮も、同じカードで伝えられます。「働く女性の母性健康管理のために」は、腰に負担のかかる作業の例として、重量物を持ち上げることや要介護者を抱えることを挙げています。患者さんの移乗介助が多い部署なら、主治医にその業務を伝えて、指導事項に入れてもらえるか相談します。抗がん剤や放射線を扱う業務の配慮と伝え方は、看護師の妊娠中の業務にくわしくまとめています。
自分はどの仕組みに当てはまるのか、迷うよね。
当てはまりそうなところに、印をつけながら読んでみて。
小学校就学前の子・介護:育児・介護休業法の深夜業の制限
子育ての場面では、育児・介護休業法19条が使えます。小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、事業主は、午後10時から午前5時までの間、働かせてはならない、という定めです。
請求の形にも決まりがあります。請求できるのは、1か月以上6か月以内の期間で、開始予定日の1か月前までです。勤務表が出てから急に、とはいかないので、希望の時期から逆算して早めに動きます。
- 当てはまるか確かめる子の年齢・勤続・同居の家族
- 請求する開始予定日の1か月前まで
- 制限の期間1か月以上6か月以内で区切る
- 期間の終わりに見直す続けるか、戻るか
区切りが来る前に、次をどうするか聞いておくと安心だよ。
請求できない人も、条文で決まっています。勤続1年未満の人、深夜に常態として子を保育できる同居の家族等がいる人、そのほか省令で定める人です。また、事業の正常な運営を妨げる場合は、制限の対象外になる例外があります。同居の家族の扱いは、省令の細かい要件に関わるので、勤め先の人事か、都道府県労働局で確認します。
「夜勤の免除」ではなく、「午後10時から午前5時の勤務の制限」である点にも、注意が要ります。準夜勤のように夜10時をまたぐ勤務をどう扱うかは、職場ごとに運用が違うので、人事に確認します。
要介護状態の家族を介護している労働者にも、同じ仕組みが準用されています(20条)。対象となる家族の範囲や、請求の細かい条件は、厚生労働省の「育児・介護休業法のあらまし」や、勤め先の規程で確認します。
短時間勤務や残業の制限は、別の請求です。組み合わせ方は、時短勤務の準備にまとめています。
健康上の理由や、法律に請求の定めがないとき
妊娠中でも、小学校就学前の子の養育でも、介護でもない人が、夜勤の免除を請求できる、と一般に定めた法律はありません。だからといって道がないわけではなく、順番に確かめられることがあります。
- 雇用契約書・労働条件通知書:夜勤や交替制勤務の有無、就業時転換(勤務帯が変わること)の記載。労働者を2組以上に分けて働かせる場合の就業時転換は、書面で明示する対象に含まれると、厚生労働省は案内しています(労働基準法15条の明示)
- 就業規則:交替制勤務の定め、勤務表の作り方、配置の定め
- 医師の意見:体調の面から夜勤が難しいとき、主治医や産業医の意見を添えて相談する
- 安全衛生の仕組み:面接指導の対象になった場合の、事業者の措置(次の段落)
- 勤務形態の変更の話し合い:外来や日勤中心の部署、勤務時間の短縮など
労働安全衛生法66条の8は、週40時間を超えて労働した時間が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者に、医師による面接指導を行うと定めています(要件は省令。厚労省の資料には、申出をした労働者が対象と説明するものもあります)。面接指導のあと、事業者は医師の意見を聴き、必要に応じて、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講じなければなりません(同条5項)。対象になるかは、勤め先の産業医や衛生管理者に確かめます。
労働契約法は、労働契約は、労使が対等の立場で、合意に基づいて結び、変えるものとし(3条1項)、仕事と生活の調和にも配慮するよう定めています(同条3項)。法律の請求権がなくても、合意として整う余地はありますが、会社が応じる義務まで定めた条文ではないので、事情と代案をそろえて相談します。
夜勤を続けるのが難しい事情があり、日勤中心の働き方を相談したいです。医師の意見を添えられるか確認します。〇月から日勤のみにする案と、夜勤の回数を減らす案を考えました。
人事や師長に、働き方の相談を切り出すときの一言
反対に、日勤のみの条件で採用されたのに夜勤を求められた、という場面もあります。労働条件通知書に勤務の時間帯がどう書かれているかが、話し合いの出発点です。契約書と就業規則を持って、労働相談の窓口で聞くと、どこが争点になるかを整理してもらえます。
請求の前に整えること、請求したあとの扱い、相談先
請求したことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることは、禁止されています。妊産婦が深夜業・時間外・休日労働をしないよう請求したことは、男女雇用機会均等法に基づく厚生労働省令の事由に含まれます。育児・介護休業法でも、深夜業の制限の請求を理由とする不利益取扱いが禁止されています(20条の2)。
社内で話が進まないときや、請求を断られたときは、都道府県労働局や労働基準監督署内の総合労働相談コーナーに相談できます。母性健康管理の措置が講じられないなど、紛争になった場合は、労働局長による援助や、調停の申出ができると、厚生労働省は案内しています。夜間・休日の電話相談も含めた窓口の選び方は、労働相談の窓口の選び方にまとめています。
請求した日付や、返答の内容は、夜勤の記録ノートに残しておくと、あとで経過を説明しやすくなります。つらさが強いときは、つらいときの窓口もあります。
当てはまる仕組みが見つかったら、まず人事への一言から始めよう。
窓口も電話も、頼っていい場所だよ。
よくある質問
妊娠したら、申し出なくても夜勤は外れますか?
自動ではありません。労働基準法66条3項は、妊産婦が請求した場合に、深夜業をさせてはならないと定めています。請求の窓口や書式は、勤め先の人事や師長に確認します。
深夜業の制限を断られたら、どうなりますか?
根拠になる仕組みで変わります。育児・介護休業法の深夜業の制限には、事業の正常な運営を妨げる場合の例外があります。断られたときは、理由を確認し、総合労働相談コーナーに相談できます。
子どもが小学生になったら、深夜業の制限は使えますか?
育児・介護休業法19条の対象は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する人です。就学後は、この条文の請求は使えないため、勤め先の制度や話し合いで、働き方を考えます。
夜勤をしない間、夜勤手当はどうなりますか?
賃金や手当の扱いは、勤め先の賃金規程や就業規則で決まります。給与明細の夜勤手当の欄と規程を見比べて、人事に確認します。
出典・参考(公的な情報)
- 労働基準法 第5条・第12条・第15条・第16条・第19条・第20条・第21条・第22条・第24条・第64条の3〜第66条・第104条・第106条・第137条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 育児・介護休業法 第19条・第20条・第20条の2(深夜業の制限と不利益取扱いの禁止)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 育児・介護休業法のあらまし(厚生労働省)
- 男女雇用機会均等法(妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止、母性健康管理)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 働く女性の母性健康管理のために(令和8年1月)(都道府県労働局(厚生労働省))
- 労働安全衛生法 第66条の8(面接指導)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 働き方改革って、な~に?(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
- 労働契約法 第3条・第8条・第16条・第17条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 労働条件の明示(確かめよう労働条件)(厚生労働省)
- 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省)
法令・制度は、上の出典を 2026年10月23日 に確認して書いています。改正されることがあるので、手続きの前に、最新の内容を各窓口で確かめてください。
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この内容は一般的な情報で、医療的な診断や個別の助言ではありません。つらさが続くときは、公的な窓口や、かかりつけ医・産業医に話してください。